阪神の試合をリモート応援、宝塚をライブ配信…新たな魅力づくりに挑む関西エンタメ業界
新型コロナウイルス感染症の影響で、苦境に立つエンターテインメント業界。“不要不急”に該当するエンタメは厳しい事業環境に置かれた。一方、関西ではファン層の厚い球団「阪神タイガース」など地場のブランド力を生かし、新たな魅力づくりに奔走している。感染症対策に万全を期しながら、関西らしい人を楽しませる工夫が盛りだくさんだ。(大阪・中野恵美子、同・池知恵)
2020年7月、阪神タイガース(兵庫県西宮市)の本拠地である甲子園球場は、異例の無観客で幕を開けた。声援や名物のジェット風船が制限される中、工夫を凝らした観戦でコロナ禍の球界を盛り上げる。
ウェブ上には、テレビで観戦しながらファン同士で会話できるチャットルームを用意。専用のアプリケーション(応用ソフト)から応援ボタンを押すと球場に流れる「リモート応援」では、57試合で約10万6000人が利用した。球場で応援しているような雰囲気を味わえると評判は上々だった。
球場ではグッズや飲食、観戦チケットの購入で2次元コード決済などを導入し、非接触ニーズに対応。「今年はさらにファンの一体感と球場の熱気を感じてもらえるサービスをつくりたい」(同社事業本部)という。
宝塚歌劇関連の商品を制作・販売する宝塚クリエイティブアーツ(大阪市北区)は、20年7月から宝塚歌劇のライブ配信サービスを始めた。同年12月までに22回実施し、視聴者数が約16万人に達した。長期間にわたる公演休止を経験し、現在も観客動員数の制限がある中、デジタルの活用でコロナ禍の顧客獲得につなげる狙いだ。
他にも、感染症対策から観客を動員できない最前列中央からの観劇を仮想現実(VR)により360度体感できるサービスを提供。通常は人気で購入困難な特等席からの景色を体験できると好評を得た。「やはり劇場に見に行きたいという声も多く届いており、コロナ後の観客動員につなげたい」(同社コンテンツ制作部)とする。
コロナ禍で新たなエンタメ施設も誕生した。20年3月、大阪府吹田市の複合施設「エキスポシティ」内に、国内最大級のデジタル教育施設「REDEE」が開設。客足が伸び悩む中、ゲーム感覚でプログラミングを学べる場所として小・中学生向けに注目を集めている。遠足や家族旅行として利用が広がっており、緊急事態宣言が解除された3月の平日は毎日、小・中学校の予約が入っている。
施設内にはVR体験やドローン操縦のほか、ブロックでロボットを組み立て、音や動きをプログラミングして動かすエリアを充実させた。
対面でのコミュニケーションが難しい中、eスポーツのオンライン大会も開催している。運営会社のレッドホースコーポレーション(東京都江東区)の但木一真最高執行責任者(COO)は「オンライン参加をきっかけとして施設に足を運んでほしい」と期待を込める。