トヨタ紡織や愛知製鋼、自動運転技術の実用化に本腰
トヨタ自動車グループ各社が、自動運転関連技術の実用化に向け本腰を入れ始めている。トヨタ紡織は、NTTドコモや愛知県が主導する自動運転社会実装プロジェクトへの参画を決定。次世代のシートや車室空間の実証試験を進める。愛知製鋼は、自動運転に使う磁気マーカーを効率良く設置する装置を開発した。各社の視点は自動運転の技術実証から、社会実装へとシフトしつつある。(名古屋・政年佐貴恵)
トヨタ紡織は今年に入り、愛知県のプロジェクトで相次ぎ実証試験を実施。1月には眠気を感知して振動や音楽で居眠りを防止する「眠気抑制シート」を、2月にはMaaS(乗り物のサービス化)を想定した次世代車室空間「MOOX(ムークス)」を搭載した自動運転車両で走行試験を行った。どちらも従来はコンセプトモデルで、実機を使った実証は初めてだ。担当者は「2025―30年を視野に、実用化を模索している」と明かす。
愛知製鋼も同プロジェクトに参画し自社の磁気マーカーシステムを使った自動運転試験を続けてきたが、マーカーを道に設置する作業負担と、道路封鎖コストが実用化に向けた課題の一つだった。そこでマーカーを自動で道に貼り付ける装置を開発。ボタンを押すだけで、走行ルートに合わせて自動でマーカーを設置するようにした。現状の貼り付け速度は時速1キロメートルだが、将来は同20キロメートルを目指す。同社の小島勝憲経営役員は「効率を高めて敷設コストを下げたい」と意気込む。
実証は完全自動運転を視野に入れたものだが、一方で技術の難易度や安全性を含めた法規制の観点から、実現には相当なハードルがある。そこで両社は収益化を見据えた戦略にかじを切っている。トヨタ紡織の担当者は「自動運転車両にこだわらずニーズに合わせた空間を提供したい」と話し、愛知製鋼も「空港や工場、港湾など制限区域から実用化し、その後高速道などの専用道へ広げたい」と方針を示す。自動運転技術をどう社会実装するかは業界全体の課題。より現実路線で実用化を目指す動きは今後も活発になりそうだ。