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ファーマフーズの創薬事業が花開く。ニワトリ由来の抗体でロイヤリティー収入

ファーマフーズの創薬事業が花開く。ニワトリ由来の抗体でロイヤリティー収入

ファーマフーズ公式サイトより

ファーマフーズの創薬事業が実を結び始めた。ニワトリ由来の抗体を取得する独自技術「アラジン」で作製した抗体の権利を製薬会社に譲渡し、新しい作用機序を持つ抗体医薬の開発に生かす。成果の第1弾として、自己免疫疾患に対する抗体医薬候補を田辺三菱製薬に独占的に提供する。2022年に年19兆円とされる抗体医薬市場に創薬シーズを投入し、ロイヤリティー(使用料)収入を得るビジネスモデルで成長を目指す。(京都・大原佑美子)

抗体医薬を攻略

アラジンは、ニワトリに病原分子を注射し、脾臓(ひぞう)の数億の抗体産生細胞から強い抗体を選抜、遺伝子組み換えによって「ヒト化抗体」を作製する。従来は難しかった抗体を作製できるのが特徴だ。これにより既存の抗体医薬が効かなかった患者の治療の可能性が広がる。

ファーマフーズは97年の創業当初から創薬事業を目指したが、開発資金の調達などを目的に、機能性食品素材などを先行して手がけた。その後、機能性食品材料「GABA」の売上高が世界首位に成長する中、06年に創薬の研究開発に着手し、19年に専門の創薬研究所を開設した。

創薬事業は今後、アラジンを軸に抗体医薬市場を攻略する。抗体医薬市場には3000億―2兆円規模の大型製品が複数ある。市場に創薬シーズを複数投入し、年間数%から数十%のロイヤリティー収入を得て、収益の柱にする戦略だ。

パートナー探索

仮にアラジン由来の新規抗体が、売上高5000億円規模の抗体医薬に用いられた場合、少なくとも年50億円のロイヤリティー収入が得られるという。

田辺三菱に権利付与した抗体以外にも、自己免疫疾患を対象にした抗PAD(自己免疫疾患の早期原因分子)2抗体などの各種PAD抗体、悪性腫瘍を対象にした抗FSTL抗体といったパイプライン(新薬候補)を保有、国内外でパートナー企業を探索する方針だ。

新規抗体の導出から臨床試験を経て医薬品が発売されるまではおおむね7―8年かかる。ファーマフーズの金武祚社長は「創業以来、夢見た創薬ビジネスがようやく花開く」と話す。初めての開発候補抗体の権利付与を機に、パイプラインを拡充し将来の収益基盤を構築できるか、期待がかかる。

日刊工業新聞2021年3月8日

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