エーザイなどが挑むアルツハイマー病の治療薬候補、日本で数ヶ月以内に患者へ投与

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ADは記憶や運動機能などが低下する神経疾患。症状が進行すると介助が必要になるなど周囲への負担は重い

アルツハイマー病(AD)の治療薬開発が進展しそうだ。エーザイは、米製薬バイオジェン(マサチューセッツ州)などと開発を進めてきたAD治療薬候補「BAN2401」について、国際的な臨床試験を開始する。日本においても、数カ月内にも患者への投与が始まる見込みだ。ADは根本的な治療法がなく、認知症の7割程度を占めるとされており、治療薬の開発に期待が高まる。(安川結野)

ADは、脳の神経細胞内に蓄積する「アミロイドベータ(Aβ)」が一因で発症すると考えられている。Aβの凝集体が蓄積すると神経細胞が変性し、信号の伝達などに異常が生じる。

BAN2401は、ADの一因とされる可溶性Aβ凝集体「プロトフィブリル」に結合するヒト化モノクローナル抗体。Aβプロトフィブリルに選択的に結合して無毒化し、脳内から除去する作用を持つ。ADの進行を遅らせる効果が期待される。

BAN2401の第3相臨床試験は、米アルツハイマー臨床研究機構(ACTC)などと共同で、2020年7月から米国で世界に先駆けて始まっている。認知機能に障害がない無症状期のAD患者を対象にしており、BAN2401と偽薬のどちらかを約4年間投与。認知機能や脳内のAβの蓄積量など、病気の進行について評価する計画だ。

日本では、20年11月に最初の患者を臨床試験に登録しており、脳の神経細胞の状態や症状などを詳しく調べた上で、適格性を判断し、近く投与を始める見込みだ。臨床試験は今後、カナダや欧州など実施国を国際的に拡大し、1400人が試験に参加する。

ADは、記憶や運動機能などが低下する進行性の神経疾患で、早期の死亡につながるケースが多い。世界保健機関(WHO)によると全世界の患者数は数千万人にのぼり、高齢化の進展などを背景に今後も増加傾向を予測する。症状が進行すると日常生活においても介助が必要になるなど周囲の負担は重い。日本を含め世界的な社会課題となっており、開発の進展は患者の福音となる。

エーザイは、ADの治療薬開発を戦略の一つとし、長年続けてきた。注力してきたAβを標的とした治療薬「アデュカヌマブ」の開発も進展しており、日本と欧州、米国で承認審査中だ。

現在は克服が難しいADだが、原因とされるさまざまな物質を標的とする医薬品の開発が進めば、疾患の段階に応じた治療の選択肢が生まれる。

日刊工業新聞2021年2月1日

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