国立大の土地活用「本命」の東大が動いた!三井不動産や三菱地所が事業協力

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東京大学は白金台キャンパス(東京都港区)と目白台キャンパス(同文京区)を滞在型ホテルやマンション、老人ホーム、クリニックモールなどに活用する計画を、3月末までに文部科学省へ認可申請する。所有する都心一等地の一般定期借地権による事業収入確保に、地域密着医療や東大の施設整備も組み合わせた。一時金約20億円に加え、1億―2億円の地代を50―70年程度にわたり受け取る。

東大医科学研究所がある白金台キャンパスは、三井不動産と三井不動産レジデンシャルの事業協力で進める。外国人向け滞在型ホテル・レジデンス(サービスアパートメント)は50年の定期借地権で建設。高級店などが並ぶ「プラチナ通り」に面し空室時は同大の海外ゲストも滞在可能。

また医療連携サービス付き分譲マンションは同73年。東大は一時金分で看護師宿舎用の住戸を得る一方、医科研付属病院のヘルスケアサービスを提供して実践研究する。さらに東大は一時金の一部として医科研の新研究施設を建設し所有する。同キャンパスの事業収入は一時金約20億円で地代は年1億円だ。

一方、目白台キャンパスは病院分院跡で、敷地の半分は19年オープンの国際宿舎で使用中。残りを三菱地所、三菱地所レジデンスの事業協力で医療系複合ビルに活用する。有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、クリニックモール、研究施設、訪問看護ステーションなどが入り、同約65年。東大は高齢社会の研究・実践や、医局関連人材による診療、看護教育に使う。一時金なしで地代は年8000万円。完成予定は23年3月。

国立大学は18年度から規制緩和により、当面使用予定のない土地全体の貸し出しが可能となった。案件ごとに文科省が財務省と協議し認可する。東京工業大学はJR田町駅近くの田町キャンパス(同港区)に高層ビルを計画し、26日にNTT都市開発などと事業協定書を締結予定だ。利便性の高い土地に限られるが、東大の地域密着医療や施設整備などの新手法は地方国立大にも参考になりそうだ。

出典:日刊工業新聞2021年2月25日

国立大、自ら“稼ぐ” 規制緩和事例続々と

出典:日刊工業新聞2018年8月23日

国立大学の資産活用で、2017年度の規制緩和を受けた具体事例が出はじめた。土地の貸し付けは東京医科歯科大学や岡山大学など3大学で駐車場用途で動いている。寄付金など余裕資金の運用は東京農工大学、長崎大学、九州大学など7大学が体制を整えた。不動産会社や銀行、証券会社から国立大への営業・提案も活発化している。国立大が自ら“稼ぐ”時代を象徴する変化が表れている。(編集委員・山本佳世子)

土地の貸し付け まず駐車場用途に

国立大の土地などの貸し付けは従来、大学の業務や福利厚生に関わるものに限定されていた。規制緩和では大学と関係ない用途でも、「当面は使用しない土地」「業務と切り分けができる敷地の端」「近隣案件と同等の貸付料」といった条件で可能になった。現在、文部科学相の認可を得た4件はいずれも駐車場用途だ。

都心の一等地の強みを存分に発揮するのは東京医科歯科大だ。JR御茶ノ水駅すぐの乗用車10台分で9月から貸し付けを始める。「運営費交付金削減の対応策の一つとして、安定した収入になる」と財務部の飯田和彦部長は期待する。次の候補にはある老朽化施設の土地を思案している。

長崎大の駐車場の一つ、本部のある文教キャンパス(長崎市)は周囲に食堂やスーパーマーケットがなく、商業施設の希望が以前からあった場所だ。しかしキャンパス全体の再開発構想を議論する中で、同地が同市のマスタープランに重なることに着目した。西田真吾財務部長は「産学連携の建物建設などで民間や自治体と連携となれば、応分の経費負担をしてもらう期待ができる。時間をかけて検討する」と説明する。そのため当面は駐車場でとなった。

現在は無料の学内駐車場が、業者への賃貸にシフトする東京医科歯科大のスペース

土地活用はニーズとシーズのマッチングだ。東京農工大は府中キャンパス(東京都府中市)の職員寮跡の更地で活用を思案したが、奥まった場所で使い勝手が悪いのがネック。島村富雄理事は「業者と条件が折り合わず賃貸を断念し、売却へと方針転換した」と振り返る。

「都市部の土地が駐車場では、あまりにもったいない」というのは、別の大規模大学と提携する大手不動産会社の担当者だ。数十年単位で土地を借り、マンションやオフィスビルなどを建てて賃貸に出すビジネスを思案中だ。駐車場の次の具体案が注目される。

寄付金の資金運用 信託会社での委託運用可能に

一方、国立大の余裕金(余裕資金)の運用は従来、元本保証の国債などに限られていた。規制緩和では元本保証でない金融商品も「原資は寄付金」「資金運用の規定や運用管理委員会の体制を整備」の条件で可能になった。商品のリスクなどに応じて四つの区分があり、文科相の認定を得た区分内の商品は自由に売買できる。

体制整備が容易な第1区分に対し、よりリスクが高い第2、第3区分は「2年以上の資金運用業務の経験者と、同窓会会員か寄付者の学外委員」が必須だ。さらに現場のニーズに応えて今春に設定された第4区分は、信託会社での委託運用だ。大学はプロに判断を任せられ、資金も少額ですむ利点がある。

東京農工大は4月に教員の国際会議での外貨支払いなどに備え、第1区分の決済用の外貨預金を開始。7月には第2区分の運用目的の外貨預金を始めた。長崎大は第1区分で、6月にソフトバンクグループの無担保社債を2億円分購入した。

民間金融機関は大学の予算を扱う財務部、特に予算執行を担当する経理課などに売り込みをかける。「付き合いのなかった証券会社の売り込みが活況を帯びている」(島村東京農工大理事)、「メーンバンク以外に、大手銀行の営業が東京や福岡から来るようになった」(西田長崎大財務部長)。付き合う相手を広げつつ、慎重に経験を積む方針の大学が多いようだ。

文科省は「正直なところ、もっと多くの大学に手がけてほしい」(高等教育局国立大学法人支援課)という。7月には九大が認定を得て、大規模大学ならではの豊富な資産の活用に注目が集まる。資産運用という新たな大学間競争が始まった。

COMMENT

山本佳世子
科学技術部
論説委員兼編集委員

東大は三井不動産、三菱地所と土地活用で協力の契約を結び、また目白台キャンパスなどが活用の対象になっていることは、数年前からウォッチしていた。目白台は全体を使って国際寮を建てるプランを練っていたところに、規制緩和の話が出てきたため、寮は敷地の半分と計画を変更したという。国立大全体では当初、駐車場利用などから始まった土地活用だが、豊富な資産を生かした注目プランがいよいよ進み出す。

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