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トンボの羽を再現した表面プロセス、抗ウイルスに効果。大ガス子会社が開発

大阪ガス子会社のKRI(京都市下京区、川崎真一社長、075・322・6830)は、昆虫の羽と同じ構造を人工的に再現し、抗ウイルスや防カビ効果を生む表面プロセス技術を開発した。現時点で新型コロナウイルスに対する評価はできていないが、コロナと同じエンベロープ(膜質性皮膜)ありのウイルス構造で効果を確認した。ナノサイズ(ナノは10億分の1)で剣山状の構造を作り、それに触れる菌などが死滅する仕組み。効果も長期持続する。

今回の技術は豪州の生物学者が発見した、トンボの羽が強い殺菌効果を持つことをベースに開発した。新型コロナ対応も想定し、ウイルス抑制効果や抗ウイルス構造のプロセス確立、摩擦耐久性の向上に注力した。

無機系材料と還元剤の混合水溶液に対象物を一定時間、浸漬すると表面にナイフのようにとがったナノ構造を形成できる。微細な突起を有するナノスパイク粒子を混ぜた分散溶媒をスプレー塗布し、対象物の表面に殺菌構造を形成するプロセスも開発した。

同社の実験では、大腸菌の殺菌率は1時間で99・9%を達成。黒カビは60日後も成長を抑制できた。インフルエンザウイルス代用物質では1時間で90%を不活化した。

同社ではエアコンの熱交換器部品や内部配管の抗菌・抗カビ用途などを想定。スプレー塗布で多様な繊維や樹脂部品などに対してもウイルス不活化の特性を付加できる。

KRIは基礎開発から実用化前までの研究を受託している。

日刊工業新聞2020年3月3日

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