巨艦NTTは“内弁慶”から脱却できるか?国際競争力強化のカギは壮大な「IOWN」構想

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NTTはトヨタ自動車と資本業務提携を結んだ(豊田トヨタ社長(左)と澤田社長)

協業通じ社会課題解決

巨艦NTTが変革への航路を全速力で進んでいる。社外との多様な提携を通じて社会課題の解決を推進する姿勢を鮮明化。一方でNTTドコモ完全子会社化などのグループ再編を通じ、研究開発力や国際競争力の強化にも取り組む。情報通信技術(ICT)インフラを支えてきた“黒子”は、英知を磨き上げ、懸案だった海外事業の拡大もできるのか。

連携が重要

「BツーBツーXのビジネスモデルにおいて、SAPとの連携は非常に重要だ」―。2020年12月、NTT社長の澤田純は、クリスチャン・クライン独SAP最高経営責任者(CEO)との共同会見で力強く語った。SAPの統合業務パッケージ(ERP)の知見を活用し、製造業などの供給網最適化に役立つソリューションを共同開発する。

公共性も評価

NTTは、企業との協業を通じて個人や法人向けに付加価値の高いサービスを提供するBツーBツーXの展開を急いできた。協業相手にはトヨタ自動車、三菱商事、ファナックなど、そうそうたる名前が連なる。ICTの力に加えて、公共性も評価された結果だ。

例えばトヨタとの資本業務提携では、移動サービスなどの基盤を開発し、さまざまな事業体に開放する。澤田は「実証データは自社で囲い込まずにオープンマインドで進める」と宣言。トヨタ社長の豊田章男は「誰のためのデータなのか、という点で澤田社長と意見が一致した」と語る。公への貢献を常に意識しつつ、舞台裏で存分に技術力を発揮するNTTの姿は、まさしく黒子と言える。

ただし澤田は、黒子は強くあらねばならないとも考えている。

約4兆2500億円でTOB(株式公開買い付け)―。NTTによるドコモの完全子会社化は産業界に衝撃を与えた。意思決定を速め、経営効率向上や海外事業の強化を図る。澤田はこうした狙いの実現に当たり、大型M&A(合併・買収)の中でも「ドコモが一番良い案件だった」と不敵にほほえむ。

小さいリスク

一般的にM&Aでは相手方の資産査定が不十分で高値づかみになったり、買収後の統合プロセス(PMI)が不調で相乗効果を十分に出せなかったりする例も多い。だがドコモは従来、NTTグループの中核企業で「PMIをあまり意識しなくて良い」(澤田)。完全子会社化に伴う「のれん」の発生もない。4兆円超という投資額とは裏腹に、リスクの小さい買い物だった。

だが、世界に目を向ければ米IT大手4社のGAFAが君臨し、通信分野にも触手を伸ばすと予想される。一方、NTTは19年度の海外売上高比率がいまだ18・7%にすぎず、“内弁慶”の側面は否めない。そこでドコモの完全子会社化を機に研究開発活動を加速し、次世代光通信基盤の構想「IOWN(アイオン)」を推進することで国際競争力も強化したい考えだ。

もっとも、澤田はお膝元の日本の状況に危機感を示す。グループ再編計画の発表前から「ドコモは3番手だ」と悔しさを吐露していた。KDDIやソフトバンクの攻勢もあり、ドコモは携帯通信市場でシェア1位にもかかわらず収益は3位に沈む。「ドコモを強くして、NTTも強くする」。協業企業と手を取り合い、世界の課題を少しでも多く解決すべく、澤田の力への希求は続く。(敬称略)

日刊工業新聞2020年3月1日

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