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削るだけでなく接合も!「残材」という課題を解決したシチズンマシナリーの開発物語

削るだけでなく接合も!「残材」という課題を解決したシチズンマシナリーの開発物語

次は接合と切削の融合に挑む(左から御園氏、鈴木氏、制御開発部制御開発課の福島裕也氏)

主軸台が移動するタイプの自動旋盤では、材料をつかむチャック部と切削点を保持するガイドブッシュ部との間の材料部分が加工されず、残材となってしまう点が長年の課題だった。シチズンマシナリー(長野県御代田町)は、残材と新たに供給される材料を摩擦熱で接合する機能を旋盤に搭載。材料を最大限に活用することで、コストの削減と環境負荷の低減を実現した。

「摩擦接合の技術を使えば、課題解決につながると考えた」。開発部製品開発1課の鈴木敏之氏は開発に至った背景をこう振り返る。摩擦接合は残材と新材の接合面を摩擦熱で軟化させ、酸化層を除去した後に圧力を加え、材料同士を原子間結合させる技術。溶接と比べて接合部の強度が高く、異種材料接合や短時間の面接合が可能などの特徴を持つ。

同技術を組み込んだ自動旋盤の製品化に向け、本格的な開発が2018年春に始動。実機による技術検証などを要するため、開発には加工技術や制御の担当者も参加した。

材料を“削る”工作機械メーカーにとっては「“接合”のノウハウがない状態」(御園春彦ソリューション推進部営業技術課課長)でのスタートだ。強度や精度などの接合品質を満たすための条件出しが難しく、接合物の測定やユーザーとのテストを重ねることで品質を確立していった。ユーザーが簡単なパラメーター入力のみで接合できるよう、使いやすさにもこだわった。

加工技術の担当が開発開始時から深く関与するのは初めてだった。他社との開発競争から抜きんでる上では「従来のメカと制御に加えて、今後は加工技術とも融合した開発思想を取り入れることも重要になる」(鈴木氏)とみており、今回が将来の開発モデルの一つになりえそうだ。

次なる開発テーマは「接合と切削の融合」(同)。同技術を自動旋盤の加工対象物(ワーク)製造にも適用し、切削だけでは不可能な形状部品なども自動旋盤1台で製造できる次世代複合化技術の確立を目指す。(編集委員・土井俊)

製品プロフィル

自動旋盤としての従来の生産能力を維持しつつ、機内で摩擦接合を行う独自技術を搭載した。従来は200ミリ―300ミリメートル程度残ってしまう材料(残材)の長さを、約5分の1まで短縮可能。環境負荷の低減と材料費削減、特に高価格材料の加工での費用削減に大きな効果が見込める。今後、ほかの機種への展開も視野に入れる。

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