激変する保険事業環境で三井住友海上・原社長が説く「時代を読む力」

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「時代を読む力が重要」と原社長

常に「社会のため」探求

「立ち止まらない保険」をブランドスローガンに掲げる三井住友海上火災保険。現状に慢心せず、誇りを胸に顧客や社会のために何ができるかを常に探求する不変の決意を込めている。今、社会は未知のウイルスとの終わりの見えない共存を強いられ、時代の激動期にある。ただ変化とは常にリスクと隣り合わせにあり、安心安全を創造する同社への役割期待が高まっている。

【損保の危機】

三井住友海上社長の原典之は「リスクの質が大きく変化している。時代を読む力が重要だ」と強調する。リスクを保険商品に転嫁する損保業界では「リスクとビジネスチャンスは表裏一体」という通説がある。いかに時代を先読みし、社会課題の解決につながる商品・サービスを機動的に提供できるかが競争力の源泉というわけだ。

ただ喫緊の課題も多い。人口減少という国内事情にあって、屋台骨である自動車保険は中長期的視点で成長を見通すことは難しい。気候変動の影響も深刻だ。自然災害の激甚、多発化が新常態となり、損保業界では2018年から2年連続で元受け保険金支払額が1兆円の大台を突破。構造課題である火災保険の収支悪化に拍車をかけている。またデジタル社会の到来でサイバー攻撃など新種リスクへの対応も不可欠だ。

【CSV×DX】

事業環境が激変する中でどのような成長戦略を描くのか―。そのキーワードが「CSV(共通価値の創造)」だ。原は「人が1人では生きられないのと同様に、企業は社会との関わりによってのみ成長できるとコロナ禍であらためて強く意識した」と話す。社会課題を解決する商品・サービスをシームレスに提供し、レジリエント(復元力のある、強靱な)で持続可能な社会の実現を後押しする。それがひいては信頼され選ばれ続ける会社の礎となり、経済的利益の獲得につながると考える。

CSV経営を高度化する“相棒”がデジタル変革(DX)だ。原は「CSVにDXを掛け合わせることで、ステージをあげたい」と意気込む。中期経営計画が始まった18年からデジタル人材の育成を本格化。育成したデータサイエンティストらが活躍する新規事業を21年度から満を持してスタートする。

さらに20年には全国約4万の代理店に人工知能(AI)を活用する代理店営業支援システムを導入。最適な時期に最適な保険を顧客に提案する仕組みで、成約率を高めると同時に抜け目のない保険設計が可能となり、顧客の経済的損失を最小限に抑えられる。

【社員一丸】

原は「保険だけでは限界があるが、デジタル活用やアライアンスで広がりが生まれる」と主張。次期社長の座をデジタル戦略を統括する船曳真一郎副社長に託した。4月に社長に就任する船曳は「保険の限界を社員一丸で超えていく。チャレンジ精神が『CSV×DX』を成功させるカギだ」と力を込める。10月には発足20周年の節目を迎える三井住友海上の挑戦を追う。(敬称略)

日刊工業新聞2021年2月24日

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