揺らぐ素材の需給バランス、化学メーカーは新技術でサプライチェーンを強固にする!

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三菱ケミがサウジ基礎産業公社との合弁で運営する現在最大のMMAプラント

需給の地域差

地政学リスクや新型コロナウイルス感染拡大は、世界に広がる素材の需給バランスに大きく影響する。物流の分断や法規制、製品・原料市況などの変化に対し、各社は新技術を用いて柔軟で強いサプライチェーン(供給網)の追求を続ける。

三菱ケミカルは、世界首位のアクリル樹脂原料「メタクリル酸メチル(MMA)」で、欧米とアジア間の需給の差を受けて、2020年11月頃から供給配分を大胆に変えた。

1―3月は中国への供給量を計画比で3割減らし、中東生産品などを欧米へ振り向けた。欧米は主原料のアセトン不足に伴いMMA不足だった一方、中国ではMMA価格軟化を受けて市況様子見による買い控えが起きていたためだ。

MMA部門の西村誠司グローバルSCM本部長は、「足元で中国MMA市況は急回復しており、この要因はアセトン価格上昇もあるが、当社の取り組みによる貢献も少なからずある」と指摘する。収益向上のための取り組みだが、市場への影響も小さくない。

数理モデル

高度なサプライチェーン管理の背後には、20年に導入したデジタル変革(DX)の最新技術がある。数理最適化技術を用いて、サプライチェーンを約1万の変数からなる数理モデルで表現し、利益が最大化するように生産供給の配分や輸送経路の計画を立案する。今後、同技術をブラッシュアップすることでさらに精度を高める。

また同社は25年を目標に、米国で世界最大となる年産35万トンの新工場を稼働させる計画を持つ。既存の米工場は原料にアセトンを使うが、新工場は原料にシェールガス由来の安価なエチレンを使う。新工場自体の競争力の高さに加え、米国での原料ソース多様化も利点となる。ソフトとハード両面の施策で、さらに強いMMA供給網を構築していく。

有事の備え

このほかにも、化学各社は供給網分断のリスクに備え、上流サプライヤーの詳細な情報把握や原料ソースの多様化、輸送経路の複線化などに取り組んでいる。宇部興産は、「単独ソースによる原料供給を是としない考え方が定着しつつある」(同社広報)という。

住友化学も、原料ソースの複数化がコロナ禍において有効に働いたという。今後、生産拠点のグローバル・バックアップ体制も充実させる予定で、「ある製品では、海外拠点の操業情報を国内拠点にも蓄積し、有事の際に人員を派遣しなくてもリモートで技術支援する体制を構築することを検討する」(同社広報)としている。

化学業界は顧客の業種が多岐にわたり、社会基盤や産業構造を支えている。安定生産・安定供給の継続へ、常に取り組みをアップデートする。

日刊工業新聞2021年2月16日

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