志摩のリゾートホテルで余暇を楽しみながら働く。近鉄不動産のワーケーションに密着

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リゾートホテルのコテージで仕事の打ち合わせを行う(近鉄不動産提供)

近鉄不動産(大阪市天王寺区、倉橋孝寿社長)は、観光地などで余暇を楽しみながら働く「ワーケーション」を新たな働き方として取り入れようとしている。三重県志摩市のリゾートホテルを活用し、2020年11月から合宿や研修、個人業務での活用を始めた。数十社の企業も試験的に利用する。21年度中にも新サービスとして本格的な事業展開を検討している。

ワーケーションに目を付けたのは18年ごろ。会議や打ち合わせが多く、社員の長期休暇の取得が難しいため、有給休暇の消化率が低いことが課題だった。そこで休暇先でも仕事ができる環境を整えられないかと検討を重ね、米国で話題となっていた労働と遊びを両立するスタイルに着目。ただ、テレビ会議などを試行したが定着せず、働き方改革はなかなか進まなかった。

そうした中、コロナ禍に突入し、強制的に始まった在宅勤務でテレワークのシステム構築が一気に進んだ。一方、研修や各種プロジェクトなど複数の社員が参画する作業はオンラインでの実施が難しく、延期を迫られた。在宅勤務の閉塞(へいそく)感や生産性の低下などの課題も浮き彫りとなった。

そこで再び働き方の見直しに乗りだした。20年7月からワーケーションの具体的な検討に着手。ワーケーションに活用する三重県志摩市のホテルは海と山に囲まれ、周辺には伊勢神宮をはじめ観光資源が豊富。1棟に最大5人まで宿泊可能の四つの独立コテージと、ホテル本館のコワーキングスペースが利用できる。インターネット回線やWi―Fi(ワイファイ)、複合機などの設備を持つ。

同年11月に5人1組の2チームに分かれて企業広告を考案する合宿を実施。考えが煮詰まった時はランニングマシンで体を動かし、気分転換として外のデッキで打ち合わせを行った。オンライン業務より「互いの距離が急速に縮まり、短時間で集中して取り組めた」(佐保田光章部長)として手応えをつかんだ。これを受け、近く現地で新入社員研修や管理職研修を予定する。

ホテル本館に設けられたコワーキングスペース(同社提供)

他社からの注目度も高い。同11月―21年3月まで大阪ガスや三菱UFJ銀行など大企業を中心とする数十社が伊勢志摩でのワーケーション実証に参加。日曜日から3泊4日の日程で平日は仕事、休日は家族を呼んで旅行を楽しむといった使い方もできる。従来は関わりがなかった部署同士による合宿などでも利用される。

都心のサテライトオフィスや自宅と比べ、「自然豊かな場所で創造性が醸成され仕事がはかどる」などの意見や、他企業と交流できるという新たなニーズも出てきた。

近鉄不動産は今後、人事制度や勤務体系など制度上の課題に取り組む。成功事例を積み上げ、他企業へ積極的に提案する方針だ。伊勢志摩以外の拠点拡大の検討や、他社に提供するサービスの内容を詰める。将来、近鉄グループホールディングスとしてもワーケーションの採用を目指す。

日刊工業新聞2021年2月9日

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