コロナ禍の救世主になるか。東急・JR東日本が挑む日本初「観光型MaaS」の可能性

東急MaaS戦略担当課長でノンフィクション作家の森田創氏が語る

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静岡県の伊豆エリアで進めている「IZUKO(イズコ)」の実証実験

東急やJR東日本が日本初の観光型MaaSとして静岡県の伊豆エリアで進めている「IZUKO(イズコ)」。実証事業の第三弾がこの11月から始まる。コロナ禍で打撃を受ける地域経済、観光産業の救世主となるのか。同事業の東急側の中心メンバー、森田創さんはノンフィクション作家としての顔も持つ。プロジェクトの舞台裏を描いた新著「MaaS戦記 伊豆に未来の街を創る」の刊行を機にMaaSの可能性を語ってもらった。

11月から実証第三弾

イズコがスタートしたのは2019年4月。スマートフォンを通じて観光ルートの検索や予約、決済サービスを一括して提供。地域内をスムーズに移動できるようにすることで、伊豆エリアへの観光客を呼び込む狙いがある。

「これまで二度にわたる実証事業では、約6000枚のデジタルチケットを販売し、一定の実績を上げることができました。一方で、サービスエリアや商品内容、さらには決済方法など機能面での課題も浮き彫りになりました。そこで11月から始まる実証事業の第三弾では、サービスエリアをこれまでの東伊豆、中伊豆エリアに加え、西伊豆や静岡市エリア、富士山静岡空港まで拡大した上で、観光体験などの商品数を従来の5倍となる約120種類に拡充します。例えば下田港で水揚げしたばかりのキンメダイを近隣の料理店で、希望の調理方法で味わうことができるなど、他ではできない経験を売りにしています」

見えてきた新たなターゲット

実証期間中を直撃した新型コロナウイルスの世界的な感染拡大。観光体験のバリエーションを広げても、そもそも観光需要が見込めないのでは。

「いいえ、むしろコロナをきっかけに、僕たちがこれまで前提としていた観光イメージや顧客像とは明らかに異なる新たなターゲットが見えてきました。ワーケーションや副業の広がりなど働き方が大きく変化するなか、新たな拠点として伊豆に目が向けられているからです。実際、滞在費の一部をワーケーション手当として支給しているIT系企業の社員の中には午前中は伊豆のシェアオフィスで業務に従事し、午後は町に繰り出し、観光や食を楽しむといったライフスタイルを実践する動きがみられます。そこで実証事業の第三弾では、顧客層を再設定し、スマホサービスと親和性の高い20代から30代の女性グループをメーンターゲットに据えました。一方、MaaSが実現するサービスは、ウィズ・コロナを見据えた『これからの観光』にマッチするものが少なくありません。スマホによる事前予約、混雑状況やこれを回避するための周辺情報の提供など、人々の行動変容につなげるところに意義を見いだすことができる。こう受け止めています」

多様な移動手段をデジタル技術によって連携させることで利便性を高め、新たな産業創出の可能性をもたらすと注目されたMaaS。世界的に移動が制約されるいま、その未来はどうなるのか。

「MaaSはあくまでも手段であり、目的は移動ニーズを創出することです。移動に対する心理的なハードルが上がった分、それぞれが求める観光体験は一層、多様化していくでしょう。同時にそれは伊豆に限らず、おそらく今後、都市部で展開することになるMaaSも同様です。既存の顧客イメージや移動に対する固定概念を打破できるか否か。むしろ変革すべきは僕らなのかもしれません」

森田創氏
森田創(もりた・そう)  東急 交通インフラ事業部 MaaS戦略担当課長。ノンフィクション作家としても活躍し「洲崎球場のポール際 プロ野球の『聖地』に輝いた一瞬の光」「紀元2600年のテレビドラマ ブラウン管が映した時代の交差点」の作品がある。

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