石油・天然ガス各社、CO2回収技術や水素・再生エネルギーへ大きく舵を切る

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国際石油開発帝石公式サイトより

石油や天然ガスを取り扱う企業が、2050年に二酸化炭素(CO2)排出を実質ゼロにする目標を明確に打ち出している。政府による50年カーボンニュートラル宣言を受けた動きだが、達成の道筋をより詳細に検討した跡がみてとれる。化石燃料の脱炭素化は、既存の事業構造を抜本的に変えなければ達成がおぼつかない。この難題に対し、CO2回収技術の活用や水素、再生可能エネルギー事業の拡大へと大きく舵(かじ)を切る。(編集委員・川口哲郎、大阪編集委員・広瀬友彦)

「国内で水素の1割以上を扱う存在になる」。50年排出ゼロの経営方針を発表した国際石油開発帝石の上田隆之社長は、中長期の企業像をこう語った。天然ガス田の炭素回収・貯留・活用(CCUS)を進めるほか、天然ガスからの水素分離を通じて、水素製造・供給事業者を目指す。

供給網を築く

CCUSは頸城油田(新潟県上越市)で88年から実証を進め、知見をもつ。水素事業では南長岡ガス田(新潟県長岡市)からパイプラインを通じて、上流から発電、水素販売までの供給網を築く。

同社が扱うのは、天然ガスからCCS(炭素回収・貯留)付きで生成する「ブルー水素」。上田社長は「我々はブルー水素をつくる能力、人材、資産がある」と強調する。天然ガス田を操業する経験・知見やCCS・CCUS技術、気体の冷却技術を有するからだ。

再生エネでは浮体式の洋上風力に挑む。豪州イクシスなどの油ガス生産設備で海上の浮体構造物を設計・運営するノウハウを生かす。同社が脱炭素に向けて事業構造を変える議論を加速したのはこの1年だ。上田社長は「新分野は何でもできるわけではない。持っている技術、人材、資源を徹底的に議論した」と振り返る。

具体的な筋道

大阪ガスは50年CO2排出ゼロに向けた中長期ロードマップを公表した。藤原正隆社長は「具体的な筋道をしっかり立て、ゴールを目指す」と強調する。筋道を裏付ける技術の一つが、革新的メタネーションと呼ぶ「固体酸化物形電解セル(SOEC)」だ。同デバイスを組み込んだ装置によって再生エネ由来電力で水とCO2から一酸化炭素をつくり、メタン化反応させて都市ガス原料にする。既存のメタネーション技術より変換効率を約30ポイント高い90%まで向上できるという。

今春にカーボンニュートラル技術の研究開発拠点を設置する。「他社とも組むオープンイノベーションで脱炭素技術の開発を加速する」(坂梨興執行役員)と具体的な戦略や実行に重点を置く。

政府のカーボンニュートラル方針を受け、50年排出ゼロを宣言する企業は増えている。ただ、商品それ自体がCO2排出源となるガス・石油業界にとって実現のハードルは高い。だからといって避けては通れない課題だ。腹をくくった上で、絵空事ではない実現性のある施策を練り、対外的に公表している。

自己変革迫る

先行する企業では、19年にENEOSホールディングス(HD)が40年、東京ガスが50年にそれぞれ排出ゼロ達成の期限を据えた。今後は出光興産が50年ビジョンを打ち出す意向で、具体的な方針を5月にも表明する。コスモエネルギーHDは20年末に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に署名しており、これに沿って20年度内に長期方針などをまとめる。

石油・ガス企業にとって脱炭素化は、いわば自己変革を迫るもの。オープンイノベーションの取り組みや官民挙げての支援・協力も必要となりそうだ。

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