電気は100%再生エネルギー! 中小企業が起こす脱炭素の“うねり”

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20日から再生エネ電気で稼働する相田合同工場。鉄を打つハンマーで電気を多く消費する

事業で使う電気全量を再生可能エネルギー由来に切り替える中小企業が増えている。中小企業が参加する推進団体「再エネ100宣言REAction」によると、会員の13社と大学1校が2020年度中に“再生エネ100%”になることが分かった。新電力の顧客でも中小企業が次々と再生エネ100%を達成している。大企業に先行し、中小企業から脱炭素化へのうねりが起きている。

再エネ100宣言REActionは中小企業や自治体、学校などが再生エネ100%を目指して19年10月に設立した。20年10月末時点の会員85社・団体のうち、再生エネ100%達成済みは9社。20年度中に4社と大学1校が達成する。

達成したのは大川印刷(横浜市戸塚区)、印刷業のSouGo(東京都江東区)、電子部品販売のマックス(同府中市)など。住宅メーカーのエコワークス(福岡市博多区)は19年度ゼロ%だったが、20年度に100%化した。

新電力のみんな電力(東京都世田谷区)の顧客(高圧以上)ではアトリエデフ(長野県上田市)、シーエスラボ(東京都豊島区)、三洋商事(同江戸川区)、花嫁わた(同荒川区)が再生エネ100%を達成した。相田合同工場(新潟県三条市)も20日から電気全量を再生エネ化している。佐々木コーティング(名古屋市瑞穂区)は21年1月から。

他の新電力や大手電力会社も再生エネ電気を販売しており、100%を達成した中小企業はさらに多いとみられる。

環境対応が評価されるESG(環境・社会・企業統治)金融の潮流があり、上場企業で再生エネ導入の機運が高まった。だが、大規模事業所は電気の契約単価が安いため、コストで見合う再生エネ電気はなく、導入が進んでいない。一方、中小企業は現状の電気料金と遜色のない再生エネ電気を購入できる環境が整い、100%化で先行している。

脱炭素“町工場”現る 中小の経営―100%再生エネ化

中小企業の再生可能エネルギー100%化が加速している。国の制度や技術革新によって再生エネ由来電気(再生エネ電気)を購入しやすくなった。製造業の街で再生エネ化を達成した町工場、全8拠点で再生エネ電気の利用を始めたリサイクル会社からは、価格面でも従来と同等という声が聞かれる。再生エネ活用のハードルは下がっており、中小企業は脱炭素経営に転換できる。

国が制度改革/VB技術革新 ブロックチェーン活用

最近まで再生エネで発電した電気を使うには建物や敷地に太陽光パネルを設置する方法が一般的だった。しかし、操業に必要な電気を賄えるほどの発電量はなかった。

現在は電力会社から再生エネ電気を購入する方法が主流となっている。以前なら電力会社も調達できる再生エネ電気が限られていた。それが今は、再生エネを使ったと見なせる国の非化石証書の購入で“実質・再生エネ100%”の電気を販売できる。非化石証書は二酸化炭素(CO2)ゼロなどの環境価値を取引可能にしたもの。再生エネで作られた電気の価値を国が証書化し2018年から売り出している。

全量再生エネ電気に切り替えた三洋商事のリサイクルセンター

企業は再生エネ発電所で発電したと分かる電気と非化石証書を組み合わせた電力メニューを契約すると実質・再生エネ100%でありCO2排出ゼロの電気を購入できる。太陽光パネルの設置よりも確実な再生エネ化だ。

他にも「グリーン電力証書」や国の「J―クレジット」も組み合わせ可能だ。また、みんな電力(東京都世田谷区)などのベンチャー系新電力は、ブロックチェーン(分散型台帳)を活用して再生エネ電気を販売する。ブロックチェーン上に記録された発電所から企業までの履歴が再生エネ使用の証拠になる。他にも地域新電力や大手電力会社も再生エネ電気を売り出しており、企業は調達しやすくなっている。

菅義偉首相が2050年の温室効果ガス排出実質ゼロを宣言したことで今後、企業も厳しい温暖化対策が迫られる。中小企業は再生エネ電気の購入で先手を打てる。

ケーススタディ(1)相田合同工場 工場電力、全量切り替え

相田合同工場(新潟県三条市)は20日、工場で使う電気全量が再生エネ由来に切り替わった。金属加工の街・燕三条で操業する社員18人の町工場が“再生エネ100%鍛冶屋”になった。

同社は農作業で使う鍬(くわ)を製造する。炉で赤くなるまで熱した鉄をたたき、形を整えて鍬にする。炉の燃料であるガスやコークスの消費が多いと思われるが、実際は電動ハンマーで鉄をたたくため電気の使用量が多い。

相田聡社長の再生エネへの思いは約20年前に芽生えていた。04年7月、豪雨によって工場が浸水した。昔の鍛冶屋は電気に頼らずに操業できたが、「今はインフラが途絶えるとモノづくりができない」と痛感した。11年3月には東日本大震災後の電力不足に襲われた。当時は壁に穴をあけ、外光が作業場に入るようにして節電に協力した。2度の経験から「災害でも仕事を続けるために再生エネを使いたいと考えるようになった」という。しかし太陽光パネルを設置するくらいしか手段は思い浮かばない。冬場、新潟は厚い雲に覆われるため発電は期待できない。

再生エネ100%鍛冶屋になった新潟・燕三条の相田合同工場。炉で赤くなるまで鉄を熱する

解決策を思い悩むうちに、全国から鍬の修理依頼が来るようになった。1度作った鍬を使い続けることはサステナブル(持続可能)と評判になったという。19年春、修理で出張した関東で再生エネ発電所で発電した電気を購入できると知り、「新潟でも再生エネを使える」と飛びついた。

紹介されたみんな電力の担当者に聞くと2工場で購入しても、現状の電気代と遜色ないと判明。2工場の面積はそれぞれ510平方メートルと280平方メートルの規模。「再生エネは高いと思っていたので驚いた」と振り返る。

20日から念願の再生エネ化が実現したが、「すぐに商売につながらない。評価されるのは10年後でいい」と話す。再生エネ導入が評価に直結する大企業と違い、創業90年の鍛冶屋は「続けることに意味がある」と言葉に力を込める。そして「地域で再生エネが増えてほしい」と願う。燕三条が災害に強い街になってほしいからだ。

ケーススタディ(2)三洋商事 電気代2割減の拠点も

三洋商事(東京都江戸川区)は11月までに大阪や奈良、仙台などのリサイクルセンターや物流センターの全8拠点の電力契約を再生エネ由来に切り替えた。拠点によっては大手電力会社よりも最大2割ほど電気代が下がった。再生エネ導入を検討する行政や他社からの問い合わせが後を絶たず、“再生エネの三洋商事”として知名度が高まった。

本社のような象徴的な事業所から再生エネ化する場合が多い。多拠点となると社内での抵抗が予想されるが三洋商事地球環境・未来創造部の石田公希部長は「苦労や理解の壁はほとんどなかった」と振り返る。以前から企業の社会的責任(CSR)に力を入れてきたからだ。同社は電子機器のリサイクルや産業廃棄物処理業を展開する。「産廃処理のイメージを変えたい」という歴代の経営者の思いから環境活動にこだわってきた。今年設立した地球環境・未来創造部もその一つで、環境活動を外部に発信する。

三洋商事の解体・リサイクル作業

石田部長は「発信によって一般の人との距離が縮まる」と河原林令典社長に要望したと明かす。石田部長は入社3年目で初代部長に就いた。「中小企業のサイズだからこそ一気に変革できる。従業員の意見が経営層に届きやすい」と語る。従業員が再生エネ導入の声を上げ、企業の取り組みを変える事例は今後他社でも出てきそうだ。

再生エネは一般的に高価と思われている。また再生エネを電気として購入できることも知られていない。再生エネに関連する先入観を取り払うことも中小企業への普及に欠かせない。

日刊工業新聞2020年11月23日

COMMENT

松木喬
編集局第二産業部
編集委員

再生エネ100%(水力のぞく)の中小企業が何社あるのか知りたくて、取材をしてみました。おそらくもっと多いと思います。地方にも達成した企業があり、地域的な広がりも感じました。相田合同工場は今後10年はサステナビリティーを目標に掲げていくそうです。中小企業はトップダウンとばかり思っていたら、ボトムアップもありなんだと、三洋商事の取材で気づかされました。

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