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航空機開発で最大のハードル「認証手続き」、民間主導型のコンソーシアム発足

価値構成4割

航空機の価値構成は主に「機体」「エンジン」「装備品」に大別され、航空用電子機器(アビオニクス)や着陸脚などの「装備品」は全体の約4割にものぼる。その一方で、我が国のこの分野におけるシェアは大きくなく、世界的に存在感を示す自動車や家電などとは対照的である。その最大の原因は航空機開発に特有な「認証手続き」であり、特に新規参入を目指す企業にとって高いハードルとなっている。

航空機の認証では、開発プロセス全てにおいてその安全性を自ら証明することが求められる。そのためには客観的でトレース可能な、複雑で膨大な文書を作成しなければならない。これをサポートするためのガイドラインが発行されてはいるものの、実際には十分な経験と知識が必要となる。

文書・知見蓄積

上述の文書や知見は先行メーカーにとっては貴重な財産であるため、競合他社との共有は難しい。そこで宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、多くの飛行実証プロジェクトなどで構築してきた航法アルゴリズムをベースに、メーカーと共同で航法装置を開発し、認証を目指す活動を開始した。

メーカーが実際に製品としての認証を取得することにより、その過程で必要となる文書や知見を蓄積する。JAXA側の知財やここで得られるノウハウは、今後の製品開発や認証の手助けに資する共通基盤技術として整備される。現在、2021年度内の認証取得に向け、設計、機器開発および審査対応を進めている。

コンソーシアム

この取り組みと並行し、そこで作成されたドキュメントテンプレート(認証特有の文書のひな型)や、ソフトウエアライブラリー(ソフトウエアの一部で他に流用可能なもの)などを蓄積・共有するための仕組み「航空機装備品ソフトウエア認証技術イニシアティブ」を18年4月に発足させた。これまでに会員などを対象とした各種教育プログラム(セミナーなど)や、海外の認証機関・規格団体(RTCA、SAE、GAMAなど)との意見交換を先行メーカーの協力のもと実施してきた。

現在、認証活動全般を支援、先導することを目的に、ソフトウエアだけでなくハードウエアも含むシステム全般の認証活動や環境試験技術などにも範囲を拡大した、民間主導型のコンソーシアムへの移行準備を進め、今年4月の発足を目指している。これにより、新規参入のハードルを下げるとともに、わが国装備品産業の競争力強化、裾野拡大につなげていきたいと考えている。

航空技術部門 次世代航空イノベーションハブハブマネージャ 跡部隆

2000年科学技術庁航空宇宙技術研究所(現JAXA)入所。02年米カリフォルニア州立大学ロングビーチ校客員研究員(03年まで)。20年より現職。航空機装備品認証の研究開発や外部連携に従事。博士(理学)。

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