難病に挑む、創薬ベンチャーの機動力と創意

開発資金の調達は大きな課題

 従来10年以上かかるといわれる新薬の創出。資金力のないベンチャー企業にとって、新薬で収益を上げることは大きな課題だ。近年、開発スピードの高い創薬方法を実施する企業が増えてきた。また大手企業の力を借りない自社販売に踏み切る企業も出現している。各社、ベンチャーならではの機動力の高さを生かし、新薬創出に挑む。

 「導入先のプランに合わせれば、当社で行う臨床試験数を減らしつつ、試験自体の規模は大きくできる」。ソレイジア・ファーマの荒井好裕社長はメリットを語る。同社は世界中の企業や研究所が開発している薬から適切な薬を選び、各種ライセンス契約を締結して開発する「導入」という形で創薬する。

 導入の場合、基礎研究の期間を大幅に短縮できる。市場に投下するまでの時間を3分の1程度にできる可能性もあるという。

 シンバイオ製薬でも導入品に特化した新薬創出を手がける。科学的諮問委員会(SAB)を組織して、臨床医や基礎科学者と議論して開発する新薬を選ぶ。現場のニーズや効果などを多面的に考慮するため、創薬が実現しやすいという。

 吉田文紀社長は「工場や研究機関を持たない、機動力の高い経営を強みの一つとしている。コストも抑えられる」と明かし、メリットを強調する。

 さらにDelta―Fly Pharmaは既存の薬をモジュールと位置づけ、創意工夫してアセンブリーすることで特許化する“モジュール創薬”という独自の創薬体制を築き上げた。既に市場に投下された薬を使うため研究開発の期間が短く、リスクも低い。

 江島清社長は「抗がん活性物質の投与形式を変えたり、他の薬と併用したりすることで副作用を軽減できる。患者様にもメリットがある」と話している。

 また、シンバイオ製薬では、現在エーザイから販売しているトレアキシンを2021年より自社販売に切りかえる。事業効率と収益性を高めたい考えだ。

 ソレイジア・ファーマでも、副作用を抑えるサポーティブケア製品を中国の一部地域で自社販売する予定だ。市場の状況に合わせ、製薬会社からの販売と併用する。

 一方でDelta―Fly Pharmaは製薬会社と提携して販売する。研究開発マネジメント業務に集中することで開発効率を高める。三者三様の販売形態をとる。

 事業効率を重要視する大手製薬会社では、患者数が少なく専門性が高い難病の薬を開発しにくい。多くのベンチャー企業は難病領域をカバーしており、存在意義は大きい。

 ただ、安全性の確認が必要不可欠な薬において、製品を市場に投下して売り上げを立てるには時間がかかる。開発資金の調達は大きな課題だ。同資金を調達する意味でも迅速な製品化と利益の確保が、重要なカギを握っている。収益を上げられるビジネスモデルの確立に期待がかかる。
(文=門脇花梨)

日刊工業新聞2019年1月15日

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。