JR東がローカル線に導入を目指す列車制御、世界初の汎用無線技術がスゴい!

踏切設備半減、他社供与も視野

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1月28日未明の踏切前後の制御を確認する試験(埼玉県寄居町)

JR東日本はローカル線で、設備のスリム化と安全・安定輸送を実現する、汎用無線技術を使う世界初となる列車制御システムの開発に取り組んでいる。全球測位衛星システム(GNSS)で列車走行位置を把握。携帯通信回線で地上・車上間を情報伝送し、列車の速度制御や踏切の制御を行う。埼玉、群馬県の八高線で試験車両による走行試験を進め、2024年の実用化を目指す。

開発中のシステムでは、遠隔地の中央装置が列車から送られる位置情報を基に、踏切に開閉を指示する。踏切内で異常発生時は、沿線で明滅する特殊信号発光機に変えて、運転士に直接、警報音で伝えて停止を促す。万が一の場合は、踏切手前で止まるよう自動ブレーキがかかる仕組みにして安全性も高める。

深沢祐二社長は「首都圏すべての線区で基本的に(専用無線を使った無線式列車制御システムの)ATACSを採り入れ、ローカル線ではGNSSや携帯電波といった汎用技術を使う」と構想する。

長年、鉄道の安全を担保する保安システムは、専用通信網を構築して設備間は有線でつないでいた。列車を制御するには列車の現在位置を、どのように把握するかが重要。各所に設けた地上子や軌道回路で検知する地上主体から、車両が随時位置を知らせる車上主体に移行して、地上設備をスリム化して保守費用を低減する流れだ。

ローカル線では「リスクが高くコストが掛かるのが踏切」(深沢社長)。一つの踏切には遮断機と警報機、支障を検出する障害物検知装置、警報を鳴動させるために列車接近を検知する地上子、800メートル超手前まで踏切内の異常発生を運転士に知らせる特殊信号発光機と、多くの設備やケーブルを使っている。地上設備は落雷トラブルにも悩まされる。

走行試験した高麗川―北藤岡間に踏切は約120カ所。ケーブル総延長は路線の5倍、300キロメートルにおよぶ。新システムは各踏切の設備を半分に減らし、保守費用を2割程度抑えられると試算する。

核となるのは汎用通信をセキュリティーに配慮して使いこなす技術だ。昨秋から計65回の走行試験で、GNSSは9割超で位置検出に使えることを確認した。トンネル前後に地上子を設け、不明時は車両の速度発電機で補完すれば実用できる。

車両や踏切と中央装置間の情報伝達に使う携帯通信網は、KDDI、NTTドコモの両社と4G回線を契約し“二重系”を備えた。通信が途絶えた場合には、列車を自動で止めて安全を確保する。

JR東は、新システムで自動列車停止装置(ATS)の置き換えも視野に入れる。中央装置が列車と常時接続できれば、連続的な速度制御も可能。自動列車制御装置(ATC)同等の機能が、車両側にデータベースを持たずとも実現できる。

採算性の厳しいローカル線でコスト抑制や安全性向上、省人化対応は維持のために避けて通れない課題。深沢社長は「鉄道会社の悩みは一緒だ。他社にも使ってもらえる」と早期実用化に期待する。

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