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もう豊島区を「消滅都市」とは呼ばせない!再生させたSDGsモデル事業

もう豊島区を「消滅都市」とは呼ばせない!再生させたSDGsモデル事業

広さ区内最大級の公園で行った「ファーマーズマーケット」

汚名返上、SDGs未来都市に

池袋駅周辺4公園を回遊する「イケバス」。時速19キロ以内で走行する優しい運転を心がける

【消滅可能性都市】

有識者らで組織する民間の政策提言機関「日本創成会議」は2014年、東京都豊島区を都区部で唯一の「消滅可能性都市」に認定した。メディアが報じる各種ランキングで上位に名を連ねるなど、自身が進める街づくりに手応えがあっただけに高野之夫区長は「住みやすい街づくりを進めてきたのに、なぜ」と驚きと疑問を隠せなかった。

日本創成会議は2010―40年にかけて20―39歳の女性が50%以上減少する自治体を推計。現行制度では自治体としての存続が難しいとして全国の「消滅可能性都市」を選定していた。

そこで高野区長は「国際アート・カルチャー都市」を掲げ、JR池袋駅周辺の4公園を中核に住民や観光客の回遊性を高める都市開発事業を推進。アニメなど文化イベントを公民連携で開催したり、新設した「女性にやさしいまちづくり担当課長」で女性や子どもの暮らしを支援する施策などを展開してきた。

【モデル事業に】

こうした中、政府が優れた取り組みを行う自治体を選定する「SDGs未来都市」に挑戦。区は20年に応募し選出された。区長は「SDGsはやはり国際アート・カルチャー都市と方向性が同じ。ずっと気になってはいたが、やってきたことは間違っていないと思った」と振り返る。

区は全国の未来都市の中でも特に優れているとして「自治体SDGsモデル事業」にも選ばれ、20年度内の執行を条件に3000万円の助成金を受けた。この第1号として区は20年12月に「ファーマーズマーケット」を開催。地元や埼玉県の中小事業者などが出店し、各地の名産品や新鮮な野菜を販売した。

余った商品は食品ロス削減の一環で購入後、NPO法人を経由してひとり親世帯や困窮世帯に配布した。初回は新型コロナ対策を徹底して行ったが、今後も定期的に開催し、都市と地方をつなぐ双方向型の観光促進事業として展開する。

【オールとしま】

消滅可能性都市に選定されて6年が経過し、区内の女性人口と納税者は順調に伸びてきているという。今後について区長は「21年度はSDGsを生かし推進する直轄の課を新設する。世界に通じる文化都市になるため、住民や事業者などを含めた“オールとしま”の取り組みを一層加速したい」と決意を語る。

日刊工業新聞2020年1月29日

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