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拡大するオンライン仕事仲介。その先にある課題

オンラインの労働市場が成熟に向かいそうだ。新型コロナウイルス感染症の収束はいまだ見えず、オンラインでの仕事仲介が拡大している。デザイナーやプログラマーなどの新しいキャリアに挑戦する選択肢が広がった。働く場所も都心から地方へテレワークの勤務地が広がっている。よりよく働くためのインフラが求められる。(取材・小寺貴之)

【副業加速】

「2021年は大企業や地方で副業が加速。スキルを生かして独立する人も増え、ますます個人として働くためのインフラが求められる」とクラウドワークスの成田修造取締役は21年の事業環境について指摘する。同社が展開する仲介サービス「クラウドテック」では求人の勤務形態で常駐を求める案件が16・3%まで減り、テレワーク形態が広がった。

20年1月には常駐が65・6%でテレワークや一部テレワークの案件の割合が34・4%だった。これが20年11月には常駐16・3%でテレワークが83・7%と逆転した。

これ以前はテレワークで求人を出す企業は兵庫県や愛知県などの地方企業が多かった。20年に都心部の企業もテレワークにかじを切り応募者は案件を場所で選ぶ必要がなくなりつつある。

【機会・手段・教育】

同業のランサーズの調査では21年の働き方トレンドの1位に「地方在住型ワーク」が選ばれた。テレワークで地域格差の解消が進む。こうした仲介サービスは、働くためのITツールとキャリア開発のための教育サービスとの連携が進む。働く機会と手段、教育をセットで提供する。

オンラインプログラミング教育を展開するキラメックス(東京都渋谷区)では転職目的の申し込みが20年1月から9月にかけて10倍以上増えた。エンジニアへの転職やウェブデザイナーやマーケターなどの在宅可能な仕事を求める人が増えた。樋口隆広社長は「これまではオンライン教育の是非が論点だったが、どうやって質をより高めるかに論点が変化した」と振り返る。

同社は訳あり品売買仲介のレット(東京都港区)と組んでEC(電子商取引)人材の育成講座を始める。コロナ禍でEC対応を迫られる小規模事業者向けに、自社通販サイトやモールの選び方などを教える。樋口社長は「オンラインだからこそできる価値を生み出したい」と力を込める。

【単発と長期混在】

オフラインでの仕事も大きく変化した。単発アルバイト仲介のタイミー(東京都豊島区)は働き手の登録者が160万人と2・2倍に増えた。副業目的などの正社員の登録が増えたためだ。小川嶺社長は「働く選択肢を広げ一人ひとりの時間を豊かにしたい」という。

働き手の就業意向を聞くと4割が単発アルバイト、4割が正社員雇用を望む。手軽さがウリの単発アルバイト仲介に副業や転職を見据えた働き手が流入している。一方、長期採用を念頭においている企業は2割。6割の企業は急な欠勤や繁閑の波への対応などで求人を出す。単発と長期が混在し、境目がなくなろうとしている。

「働く」とは仕事の受発注では済まない面がある。21年はオンラインサービスがオンラインに留まらなくなる。地方やオフラインへのツールや教育などのインフラ整備が次の焦点になる。

日刊工業新聞2021年1月12日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
コロナ禍で生じた労働移動を支えた一つがお仕事の仲介サービスでした。各社オンライン仲介が伸びており、教育やツール、コミュニティーを駆使してサービスを厚くしています。オンラインで働ける仕事は増えましたが、オンラインで完結する仕事が案外少ないのも事実です。付帯の部分もオンラインとオフライン問わず提供できると働き手に寄り添うことになると思います。

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