【動画】浮上油回収装置からロボットまで、 相模原の中小企業の変化力に学ぶ

永進テクノ、ロングセラー商品の裏にアイデアと独自の販売戦略

  • 0
  • 0

神奈川県3番目の政令指定都市でモノづくり企業が多く立地する相模原市。その北部に位置する緑区はリニアモーターカーの神奈川新駅(仮称)が開業予定で、産業の活性化が期待されている。永進テクノは1974年にこの地で創業し、事業環境の変化に対応しつつ成長を遂げてきた。祖業は工場設備のメンテナンスだが2000年に自社設計に乗り出してから業容が変貌。現在は工作機械で使うクーラント液から不要な油などを回収する浮上油回収装置「ECO EiT(エコイット)」シリーズの製造販売のほか大型コージェネレーションシステム(熱電併給)向けのユニット製造、ロボットシステムを3本柱としている。

リーマンショックを契機に

その転換点となったのは2008年のリーマンショック。直前の業績は、大手重工製の大型発電機用コージェネレーション熱交換ユニットが好調で最高益を記録していた。だが、翌年は一変して売上高が激減。この危機感が自社製品開発の原動力となった。

鈴木社長は当事副社長で、創業者の久保徹夫社長(当時)がエコイットの開発に着手した当初は、反対したという。「コージェネレーションシステムの需要が戻るのを待った方が良いと思った」と言うが「今考えると、新規分野に乗り出す自信のなさかもしれない」と振り返る。

久保前社長は創業当時から自社製品開発や、若手社員の活躍の場を作りたいという思いが強かった。2000年頃には自社設計を始めるとともに、若手社員を多く採用。変化対応の基礎を作りつつあったという。ちなみに鈴木社長は2002年に入社、経理や購買、営業を経験し経営者としての素養を培っている。

エコイット開発は、リーマンショック直後の仕事が急減した時期に浮上油回収装置を受注したことが発端だった。浮上油回収装置とは、工作機械で使ったクーラント液をタンクに集め、表面に浮かんだ油や金属くず(浮遊スラッジ)を吸い込んで回収する装置。クーラント液の劣化は工作機械や工具の加工能力や加工対象物(ワーク)の品質などに悪影響をもたらす。クーラント液の品質を保つと、液交換や設備の清掃などの手間が減り、環境負荷低減にも貢献する。

工場内に並ぶ「エコイットシリーズ」

エコイット以前から他社の浮上油回収装置はあったが、回収能力で満足いくものがなかった。久保前社長はそこに目を付け、液表面の高さの変化に追従しつつ、表面より少し低い位置に吸い込み口を保つことができる「2段式液面追従システム」を開発、特許を取得した。鈴木社長は「創業時から工場の細々した困りごとに対応してきたノウハウと、久保前社長がアイデアマンだったことで特許技術を生み出せた」と受け止めている。

ユニークな販売店制度

効率よく浮上油を吸い込む技術と、工場のエアーを使う電力不要の駆動方式、シンプルな構造で誰でも簡単に使える利点を盛り込み、エコイットの第1弾「WD A」を2009年7月に発売した。だが、販売開始から半年で10台と売れ行きは芳しくなかった。リーマンショック後の需要減と、「飛び込み営業で良く分からない製品を提案されても買いたいとは思わない」(鈴木社長)と、効果的な営業提案が見いだせなかったことが原因と自己分析。当初は手探りで、効果を理解してもらうため、実際に営業先のクーラントタンクを掃除して回った。最初は反応が悪かったが、この策は徐々に効果が出て、後には認知度が上がっていった。

展示会にも出展した。効果を見せると「この装置を売りたい」という企業も現れた。機械・工具商社や機械油の販売会社が多く、全国的な販売網構築に手応えを持ったという。「キーマンを捕まえると円滑に進む」ことも学んだ。そこで、2010年にユニークな販売店制度を整えた。まず、代理店には5台のエコイットを買ってもらい、売り切るまで永進テクノがサポートする。代理店自らが装置への理解を深められ、効果的な提案ができるという狙いだ。賛否両論あったものの、20社が集まり、現在は約40社、販売ディーラーは約200社というネットワークにつながった。エコイットシリーズは沈殿するスラッジ回収など製品群を広げ、累計出荷台数は2700台に上る。

ロボット技術で自動化のニーズに対応

ロボットシステムに着手したのはリーマンショック前にさかのぼる。専門部署を発足していたものの本格的に動いてはいなかったのが実情だったが、2013年に相模原市が「さがみロボット産業特区」の指定を受けたことをきっかけで、「ロボットシステムの部署があるなら参加を」と声がかかった。

多くの製造業がロボットによる自動化、生産の効率化を目指す中、ロボットシステムの構築業者(SIer)の不足が指摘されている。永進テクノは大型ユニットの加工や組み立てのノウハウを持ち、徐々にSIerの受注が増えていった。

鈴木道雄社長

SIerとしてのネットワークが広がる中、2015年に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のロボットプロジェクトに応募することになり、技術を補完するため同業で精密部品加工に強いJET(相模原市中央区)と共同で「コンビニ向け加工食品の仕分けロボットシステム」を開発した。2016年には折半出資でトランセンド(同市同区)を設立し、仕分けロボットの技術を食品、化粧品などの「三品産業」へ提案している。鈴木社長によると、永進テクノは得意の大型ロボットシステムやエコイットに関わりのある機械加工の自動化を扱い、トランセンドは研究開発的な取り組みや、三品産業向けを扱うというすみ分けをしている。鈴木社長は「実は、ロボットは機械による生産工程で多く採用されており、人海戦術による生産工程の自動化は思うほど進んでいない。双方のノウハウを生かし、作業者を長時間・深夜の単純作業や寒い、暑い、重いといった危険で過酷な労働環境から解放する“活人化”に貢献したい」と意気込む。

そしていま。同社の売上高の半分がコジェネ関連。だが、製造業の変化でエコイットとロボット関連のニーズが増し、成長軸になると見ている。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、オンラインによる商談や展示、メールマガジンの発行など営業スタイルにも新機軸も打ち出している。これからも環境変化に対応しながら、相模原地域をけん引していく企業としての存在感を発揮していくことが期待される企業である。

【企業概要】 ▽所在地=相模原市緑区下九沢1630▽社長=鈴木道雄氏▽設立=1974年5月▽売上高=4億円(2020年9月期)

METIジャーナル

キーワード
永進テクノ

関連する記事はこちら

特集