人間は五感すべてで「デザインを感じる」。気づかなくても影響は受ける奥深い世界

おすすめ本の抜粋「よくわかるデザイン心理学 人間の行動・心理を考慮した一歩進んだデザインへのヒント」

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デザインと人間

人間は、五感を通して、常に非常に多くの情報を取り入れています。しかし、人間はそれらすべての情報を意識的に受容するわけではありません。たとえば、他の人に声を掛けられたのに、まったく気付かなかったというような経験は誰しもあると思います。そのような場合、そのときの声は聴覚システムによって適切に処理され、情報として脳に入力されていたはずなのですが、おそらく何かに気を取られていたり、集中していたりして、その情報に注意を払わなかった、あるいは払えなかったために気付かなかったものと考えられます。

ただ、ここで注意しなければならないのは、そのように「気付かなかった」場合でも、その情報が完全に失われてしまったわけではありませんので、何らかの影響は残っている可能性があるということです。ですから、上記のような場合、その声を掛けられた人は、後で思い返してみると声を掛けられたような気もする、という反応をすることもよくあります。これは何も聴覚だけに限ったことではなく、五感のすべてに当てはまることなのです。したがって、人間の五感(感覚)に関する問題を扱う場合には、この点を銘記しておく必要があります。

デザインは、それを創造するのも、また使用(利用)するのも人間です。しかも、デザインを創造したり、あるいは使用(利用)したりする際に、人間は五感も含め、そのあらゆる能力を働かせます。つまり、デザインには人間のあらゆる側面が関わってくるのです。

「デザイン」という言葉を聞くと、多くの人はスマホや家電製品あるいは車などの形のある工業製品を思い浮かべることと思います。実際、それらは「デザイン」が重要な役割を果たす対象ですから、それも自然なことでしょう。しかし、今日では「デザイン」の関わる領域は、一般の人々が想像できないほど拡大しています。ですから、「デザイン」は、文字通り私たち人間の日常生活の全般に関わっているのです。

ひとつ具体的な例を挙げてみましょう。皆さんもショッピングモールやデパートに行き、買い物(あるいはウィンドウショッピング)を楽しむことがあると思います。そのようなときに、ある店舗ではとても気分がよく、長く滞在したくなるのに、他の店舗ではなぜか落ち着かず、すぐに出てしまったというような経験があるのではないでしょうか(図参照)。もちろんその理由を一概に特定することは難しいのですが、それらの店舗の「雰囲気」がその大きな要因となることは確かだと思います。

「雰囲気」というととても漠然としていますが、もう少し詳しくいえば、その店舗のインテリアデザイン、照明デザイン、音響デザイン等のすべての側面から醸し出される要素を人間の五感が受容することに起因しているといえるでしょう。

(「よくわかるデザイン心理学 人間の行動・心理を考慮した一歩進んだデザインへのヒント」p.6-7より一部抜粋)

書籍紹介

心理学は記憶、学習、思考などを含めた人間の行動全般を科学的に扱います。「どういうデザインが好まれるのか」「何がストレスになるのか」「どうすれば注意を引きやすいのか」といった商品開発時に発生するデザインの課題解決に心理学の手法を用いるのが、デザイン心理学です。形あるものだけでなく、サービスやシステムのような目に見えないものも応用できる対象となります。本書では、科学的な根拠をもとにしたデザインとは何か、どのように導くのかなどについて具体例とともに紹介します。

書名: よくわかるデザイン心理学 人間の行動・心理を考慮した一歩進んだデザインへのヒント
 監修者名: 日比野 治雄
 著者名: BB STONEデザイン心理学研究所
 判型:A5判
 総頁数:156頁
 税込み価格:2,420円

販売サイト

Amazon
 Rakutenブックス
 日刊工業新聞ブックストア

監修者

日比野 治雄(ひびの はるお)
 千葉大学大学院工学研究院 教授(日本で唯一のデザイン心理学研究室)
 株式会社BB STONEデザイン心理学研究所(特許第5854411号を基盤とする千葉大学発ベンチャー) 技術顧問

●専門分野
 デザイン心理学、色彩科学、デザインに関する認知科学、エモーショナル・デザイン

著者

株式会社BB STONEデザイン心理学研究所
 科学的なデザイン・コンサルティング手法で特許を取得した千葉大学工学部デザイン心理学研究室発のベンチャー企業。
 人間の行動、言葉で語れない部分を、実験心理学の手法を応用し、紐解いていくという、今までにない科学的なアプローチによるコンサルティングを行っている。心理学的視点を用いることで、従来のアンケートや主観的な評価では得られなかった、消費者の本音、嗜好、意思決定のプロセスを明らかにすることを可能とした。
 デザインの見やすさ、わかりやすさ、印象だけではなく、企業の抱えるさまざまな問題解決も独自の実験手法にて行っている。その顧客の9割以上が一部上場企業であり、金融機関、官公庁、大手メーカーなど多岐にわたる。 「デザイン心理学で顧客の言葉にならない声を紐解き未来を予測 新たなマーケティングを科学する」企業である。
 株式会社BB STONEデザイン心理学研究所の公式ホームページはこちら

目次(一部抜粋)

【第1章】「デザイン心理学」とは
 デザインと心理学の関係/デザイン心理学の目指すこと/デザインと人間/デザイナーはユーザの選択をデザインすべし!?/[開発ストーリー]〈株式会社イプサ〉/人間はなぜカッコいいデザインに惹かれるのか?/デザインの価値

【第2章】デザインへのヒント―人間の特性を知る
 人間の知覚特性-人間は機械ではない-/見ているようで実は観ていない-アイトラッキングの落とし穴-/人間は皆、他人に厳しく、自分に甘い?/物事には限度が…-感覚遮断の恐怖!?-/人間の知覚特性-錯視-

【第3章】シニア向け商品をデザインする
 シニアを対象とした製品・サービスを扱うには…/シニア向けの製品の功罪/身近にあるデザインの事例-家電のリモコン-/[開発ストーリー]〈ダイキン工業株式会社〉/シニアとデザイン

【第4章】ノートをデザインする、文字をデザインする
 身近にあるデザインの事例-ノートの罫線-/勉強がはかどるノートは作れる?/製品の性能を比較するには-ノート罫線の例-/身近にあるデザインの事例-書体とフォント-

【第5章】空間をデザインする
 人間にとって快適なデザイン/照明は天井から?-既成概念の打破-/照明による視覚的ストレス-『21世紀のあかり』プロジェクトへの参画-/人間の知覚特性

【第6章】色とデザイン
 虹の7色の起源はニュートン!?/押してもだめなら引いてみな!?-逆転の発想-/人間は皆同じ?-色覚の個人差-/色の好悪を知ることの難しさ/色を使うとき知っておくべき色の効果

【第7章】科学的根拠が求められる理由
 これからのデザインに必要な条件-科学的根拠-/データとは何か?-データの種類/そのデザインを知らざれば、それを使う人を視よ!?/「人を測る」とは?/[開発ストーリー]〈株式会社電通〉/順位付けの科学-正規化順位法-/短時間呈示法によるデザインの評価

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