【2021】今年はおうちで読書を!経営者たちが新成人に薦めるこの一冊

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『下町ロケット』(池井戸潤著)

●花王社長・長谷部佳宏氏 夢や志を忘れるな

町工場が技術を武器に宇宙や医療分野で活躍する。「自分が何のために仕事をするのか」をストーリー仕立てで学べる。これから社会に出る新成人に、技術を世の中のために役立てたいという思いを持ってもらえたらうれしい。

多くの人が社会に出るに際し、これまで学んできたことを生かしたいと意気込む。ただ、この気持ちは大抵、途中で次第に小さくなっていってしまう。しかし、物事は最後までやってみないと分からない。主人公の決して諦めない姿勢から教えられることは多いだろう。渾身(こんしん)の力を込めてつくったモノは必ず世の中にためになる。最初に持った夢や志を忘れないでほしい。

『Think clearly』(ロルフ・ドベリ著) 

●明電舎社長・三井田健氏 物事全て軌道修正が不可欠

心理学や哲学など学術研究といった側面から、人生に対するより良い考え方を整理してまとめた本だ。私は1から52までの全ての考え方をノートに書き写して毎日確認している。寝る前に今日うまくいかなかったことを思い返して集中する。

印象的だったのは、重要なのはスタートではなく、離陸直後からの修正技術という考えだ。物事が全て計画通りにいくことはないし、早いうちに軌道修正した人こそ上手くいく。人格形成も修正力が欠かせない。こうした解説を石器時代から現代まで人間の脳の進化に触れながら導き出している。人生の節目に読むのに良い考え方が集まっている。新成人にお勧めしたい。

『デザイン思考の道具箱』(奥出直人著)

●森トラスト社長・伊達美和子氏、アイデア出して人前で発表

社会に出ると、学生時代とは異なり、答えのない世界が待っている。自分で考え、企画し、実行する力が問われてくる。そんな時に参考になるのが、この本だ。

慶応義塾大学大学院教授(現名誉教授)の著者が、イノベーションを生む会社のつくり方を解説している。現場に出て観察し、企画を練り、プロトタイプをつくり、それを実証する。こうした具体的なプロセスを詳しく書いている。

当社では、この本を人材育成に活用している。現場を見てアイデアを出し、最後は人前で発表する。良い提案は具現化していく。中には実際に形になった提案もある。今回、成人を迎える若い人たちにもぜひ試してもらいたい。

『経営の教科書』(新将命著)

●明治安田生命保険社長・根岸秋男氏 社会人としての心得学べ

グローバル企業の社長職など幾多のビジネス経験を培った著者が導き出した「経営の原理原則」を集約した本だ。経営者やリーダーとしての心構え・あり方について書かれてあり、これから社会の中で自立していく新成人にきっと役立つだろう。

例えば「コミュニケーション」については「共感」を生むことが一番の目的であり、相手に関心を持ち、理解することが大前提。また「自分が何を言ったか」よりも「どう伝わったか」が重要であるなど、本質を突いた説明がたくさん盛り込まれている。社会人の心得としても学ぶべきことが多い。社会との関わりが増え、迷ったり壁にぶつかったりした時、本書の考え方がヒントになるはずだ。

『ディズニーCEOが実践する10の原則』(ロバート・アイガー著)

●フジテック社長・内山高一氏 視野を広げ、視点を上げろ

世界最大のエンターテインメント企業・ディズニーを約15年、CEOとして率いたロバート・アイガー氏が自身の経験をまとめた1冊。世界中で読まれている。アイガー氏はトイストーリーで有名なピクサー社などの大型買収で伝統ブランドをさらに強固にした立役者である。

だが、彼のキャリアは順風満帆ではなかった。多くの苦難から学んだ真のリーダーシップに必要な10の原則が書かれている。その一つに「前向きであること」を挙げている。同じ経営者として、とても共感できる。仕事は単純明確ではなく答えも一つとは限らない。どんなときも前を向いて進むことは大切だ。視野を広げ、視座を高め、視点を上げるための示唆に富んでいる。

『楽毅』(宮城谷昌光著)

●アズビル社長・山本清博氏 “大木を避け、川を渡れ”

ある時、世の中の本を全て読めるわけではないと悟った。そこで一冊の出会いを大事にし、既読の良い本を読み返そうと考えた。この本は1999年から10回ほど読んでいる。その都度気づきがある不思議な本だ。中国・戦国時代の武将の話で、今で言うと、あるべきリーダーに近い形なのではないか。

仕事で行き詰まった際、「大木を避け、川を渡ればよい」という文中の言葉で救われたこともあった。文庫本で500円程度だったので、これで人生が開けたのであれば安いものだ。自らの思想を押しつけるようで、普段は本をあまり薦めない。ただ、読み返すことも読書の楽しみ方としてあるということを若い人にも知ってもらいたい。

『置かれた場所で咲きなさい』(渡辺和子著)

●はるやまHD社長・治山正史氏、進む道を考えるヒントに

「人はどんな場所でも幸せをみつけることができる」「時間の使い方は、そのまま いのちの使い方なのです」など、人生という海路を進む上で後押しをしてくれる強い風のような言葉が続く。

これらは、小学生のころ二・二六事件に遭遇し、目の前で父親が襲撃され、命を落とす経験をした著者だけに私たちの心に響く。

人生には何度か分岐点がある。20歳となった際も多くの可能性の中からどの道に進むか、考える時かもしれない。その判断の際に不安を軽減してくれる言葉、自分を勇気づけてくれる言葉に出会う事は大切だ。この本にはそういったヒントになる言葉が多く書かれている。読みやすい本なので、手に取ってみてほしい。

『ペスト』(カミュ著)

●科学技術担当相・井上信治氏 不条理に対応、人生の参考に

北アフリカの街でペストが突然発生し、住民が一丸となってウイルスと戦う物語。新型コロナウイルス感染症が拡大する中で注目された一冊だ。

登場人物は感染症に恐れ驚く中、裏切りなどさまざまな経験をする。物語が進むにつれ、皆が協力することの大切さを知る。医療従事者を中心に懸命に闘って打ち勝つ喜びも描かれている。今苦しくても将来新型コロナを克服できると感じてほしい。この本は「不条理」にどう対応するかがテーマ。新成人には人生を歩む中、感染症などさまざまな不条理が降り注ぐだろう。それに対してどう対応するかを学べ、努力し、協力することの大切さを考える人生の参考になる。

日刊工業新聞2021年1月11日

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