寒波でLNG火力の供給追いつかず。今後の脱炭素路線にも影響?
電事連、全国に節電要請
厳しい寒さに伴う需要増加や火力発電所の燃料不足などで電力供給が追いつかない事態を受け、電気事業連合会は10日に節電の要請を始めた。8日には西日本を中心に全国7エリアで最大需要が10年に一度とされる規模を上回った。電力各社が相互の電力融通や火力発電の定格出力を超えた運転、自家発電設備からの追加調達などの対策を取っても、需要側の協力が必要なほど需給が逼迫(ひっぱく)している。
電力各社は日常生活に支障のない範囲で電気機器の効率的な使用を要請する。家庭ではエアコンの室温20度の設定、オフィスでは執務エリアの照明を半分程度間引きするなどの取り組みを推奨する。
全国的な節電要請は2011年の東日本大震災以来。背景にあるのが電力需給の厳しさだ。9日には関西電力エリアの電力使用率が97%に達するなど、一部エリアで最低限必要とされる予備率3%も確保できなくなった。電力広域的運営推進機関(OCCTO)は20年12月15日に電力融通の指示を始め、1月6日には非常災害対応本部を設置。発電事業者に最大限の発電を要請したり、地域間連係線の運用容量を拡大したりと対策を総動員している。ただ、ガス火力発電は燃料不足で、追加できる発電電力も限られ、需要側の協力なくして供給責任を守れない事態となった。
■電事連、節電要請
厳冬下による電力需給の逼迫(ひっぱく)を受け、電気事業連合会(電事連)は10日から節電の要請を始めた。暖房の増加などで需要が想定を上回り、液化天然ガス(LNG)火力発電の供給が追いつかない。電力各社は電力を融通したり、自家発電設備から調達したりと対策を取っているが、需給の厳しさが解消されないため、需要側への協力要請に踏み切った。悪天候だと一気に供給余力がなくなる現状を踏まえると、今後の脱炭素の議論にも影響を与えそうだ。(編集委員・川口哲郎)
九州電力エリアの7日18―19時の最大電力が1606万キロワット時と、冬季の過去最高記録を更新した。この日の福岡市の気温は最高5・7度C、最低マイナス2・2度C。自宅で一斉に暖房をつけ始め、電力需要がピークに達したとみられる。
電力広域的運営推進機関(OCCTO)によると、4日から10日までの合計の使用電力量は前年同期比13・2%増。電力各社の供給力に対するピーク時電力使用率は、多いところで96―97%と厳しい状況が続く。
OCCTOは需給改善のため、2020年12月中旬から送配電事業者に電力融通の指示を始めた。関西、中国、北陸など状況が厳しいエリアを中心に融通の指示はこれまで累計117回。1月6日には非常災害対応本部を立ち上げ、発電設備の最大出力での運転や、発電余剰分の市場投入などを要請している。
想定を上回る需要に対し、LNG火力発電は即応できない。小売電力事業者の通知に基づき燃料を調達しており、需要が急に増えたからといっても調達のリードタイムに2カ月かかるからだ。LNGは備蓄が難しい上に、設備に支障を来さないようにタンクの在庫量を維持する必要があり、稼働率を無理に上げられない。販売競争の激化を背景に、小売事業者の需要見通しが低かった可能性がある。
火力発電最大手のJERAはトレーディング事業の知見も生かしてLNGを追加で集めると同時に、石炭火力で定格出力を超えた運転を始めた。広野火力発電所(福島県広野町)、常陸那珂火力発電所(茨城県東海村)の石炭火力4基で、合計約240万キロワットの追加供給力を確保した。火力発電の燃料不足を受け、電事連も支援に乗り出した。石油連盟と日本ガス協会に燃料の協力を要請した。
冬場は寒いほどに電力需要が増え、事業者にとっては追い風だ。ただ、供給力を超える分には業界挙げての対応が必要で、供給責任を問われる。石炭火力などの化石燃料発電は休廃止の方向だが、供給力が不足する局面では調整力の電源が必ずいる。気象条件の影響を受ける再生可能エネルギーは、蓄電技術に限界がある現状では調整力になりえない。脱炭素を進める中、安定供給の課題が突きつけられている。