ウェブ限定の住宅商品「ライフジェニック」にかける、大和ハウス社長の熱い思い
―足下の経営状況を教えて下さい。
「ウェブ限定の戸建住宅商品『ライフジェニック』の販売が奏功し、2020年度下期の戸建住宅販売が持ち直している。一方で賃貸住宅販売は低調。政府の施策であるグリーンポイントの付与で回復を期待する」
―住宅営業は変化していきますか。
「ウェブでの販売を強化し、展示場のあり方を見直す。具体的にはライフジェニックなど、ウェブで取り扱い可能な商品を拡充する。断熱性と耐震性の高い『ジーヴォシグマ』など設計難易度の高い商品を加え、展示場の中身も変えていきたい」
―国内の物流施設事業は。
「かつて工業団地を中心に町ができたように、物流施設を中心とした街づくりに着手する。工場の自動化が進む一方、物流施設はほとんどが人海戦術。物流施設内に保育所を入居させるなど、雇用環境を整える。今後さらなる電子商取引(EC)の需要増に伴い、住宅密着型の物流施設の展開を考えている。高齢化が進む郊外型住宅『上郷ネオポリス』で、21年度内の実証を検討する」
―国際事業をどうみていますか。
「米国では新型コロナ禍で郊外の戸建住宅需要が急激に伸び、昨年12月以降は想定以上の増収が見込まれる。欧州では子会社化したオランダ・ヤンスネルなどと工業化住宅の開発を強化し、英国や米国、独への展開を狙う。豪州は住宅の景気落ち込みが激しいが、人口増加に伴う回復に期待する」
―海外の物流施設事業の状況は。
「現在、東南アジアを中心に冷蔵設備を整えた物流施設を展開する。注力するインドネシアでは、港から市内までの輸送距離が長く、生魚の輸送を支える物流設備の需要増により、一定の市場規模があると見ている。21年3月期に新たに3棟目の着工を検討する」
―今後の住宅市場の見方は。
「20年度は80万戸を切り、30年度には約60万戸と見ている。今後も人口減などで右肩上がりにはならない。ただ、リモートワークの急増で都心部から郊外への賃貸住宅の住み替えが進んでいる。郊外での戸建住宅着工数は伸びるのではないか」
【記者の目/コロナ禍も物流施設事業が下支え】
住宅展示場の休業などコロナ禍の影響は少なくないが、大和ハウス工業では物流施設事業が下支えとなった。芳井敬一社長は「我々のポートフォリオは強い」と自信をみせる。今後は住宅の営業手法の見直しや施工現場のデジタル変革(DX)化を急ピッチで進める考えで、ポストコロナ時代も成長が期待できそうだ。(大阪・池知恵)