住友理工が「CASE」で狙う次世代技術は断熱材
住友理工がCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)などの次世代技術への対応を強化する。その推進役を担うのが「新商品開発センター」だ。同センターは事業間を横断し、主力の自動車向けや自動車向け以外の新商品について、開発から事業化まで効率的に手がける体制を構築する。断熱材などの新商品も出てきており、次代の競争力を確保していく方針だ。(名古屋・山岸渉)
新商品開発センターは新商品企画部や自動車新商品開発センターなどを統合し、2020年4月に開設した。従来の研究開発は基礎研究などに力を入れがちで、なかなか商品化にまでたどり着かないといった課題があった。
一方、事業部だけだと手がけている商品の中だけに留まってしまうことが多いといった悩みもあった。「両方を解決するために同センターを作った。関連事業部で生産できるなら立ち上げていくというスキーム」。同センター長を務める浜田真彰執行役員はこう説明する。
同センターでは事業部から人員を集めるなど事業化を見据えた研究開発がしやすい体制にした。同センター内には四つの部を置く。
モビリティ商品開発部は自動車関連、新事業商品開発部は自動車関連以外の研究開発を手がける。先行基盤技術部では事業部を横断的に基本的な設計や解析などを手がける。新商品企画部では営業や購買機能を有して戦略を練り、原価や量産へのプロセスを検討する。
住友理工が力を入れる分野の一つが、強みである高分子材料技術を活用した熱マネジメント領域だ。エネルギーマネジメントの中でも熱マネジメントは、車の電動化において航続距離の確保などで重要性が増している。
そこで住友理工が提案するのが断熱材だ。薄膜高断熱材「ファインシュライト」を開発し、不織布にコーティングしたシートタイプを製品化した。空気が動けないほど小さな細孔を持つ高断熱フィラー(シリカエアロゲル)を塗料化。コーティングすることで高い断熱性を発揮しつつ薄くて柔軟といった特徴がある。
断熱材は自動車の空調用ダクトで需要があるとみる。例えば、ダクトは車内の天井や床下に通り、外や路面から熱を受ける。エアコン内の空気は「断熱材を貼っておけば中の空気は暖まらない」(浜田執行役員)。冷風でも温風でも仕組みは同じだ。電動化などの進展でより求められる車内の快適性に寄与する部品となる。
中国やインドなど海外でも、所得が増えれば車内の快適性への需要が高まる。日本車の品質の良さは「すぐ暖まり、すぐ冷えるという工夫ができる点」(同)と強調。断熱材は「25年度までに数億円規模にしたい」(同)と描く。 ファインシュライトは自動車以外でも出前・宅配専用温熱シートの専用パッドに採用された。浜田執行役員は新商品を「タイムリーに出さないといけないし、抜きん出ているものがないといけない」と捉える。次世代の成長に向けてより効率的な開発体制の確立が重要となる。