家電量販店に異例の陳列、冒険家を救ったシートの正体

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家電量販店のエディオンが10月、布団に敷くシートを発売した。寒い日でも心地よく眠れるという。エディオンが扱う商品でありながら、電気を一切使わない。しかも生地1枚で価格は1枚で8980円(消費税込み)。家電量販としては“異例”の商品だ。

このシートは日進産業(東京都板橋区)が開発した。生地上の塗料「GAINA(ガイナ)」が、体から出た熱を遠赤外線に変えてはね返す。布団に敷いた人は自身の体温が反射した熱で温まる。

シートは思わぬ場面でも活躍した。冒険家の阿部雅龍さんが北極圏を旅の途中、テントなどを海に落としてしまい、シートにくるまって極寒を耐えたという。同社は本社のある板橋区に登山家の植村直己さんの記念館がある縁から、阿部さんを応援しようとシートを渡していた。2019年、阿部さんは板橋の町工場10社が製作したソリに荷物を積んで南極点に到達した。そのソリにもガイナが使われた。

【セラ粒子入り】

冒険家の命も救うガイナはロケット技術がルーツ。日進産業は2005年、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とライセンス契約を結んで開発した。塗料には熱を制御する特殊セラミックの粒が入っている。普通、セラミックの含有は20%程度だが、同社は60%まで高めて機能性を持たせた。

本来は建物に塗って使う。通常の断熱材は屋外から室内への熱の移動を緩やかにするが、建物に熱がとどまるため室内も暑くなる。ガイナはセラミック粒子で熱をはね返すので建物への影響が抑えられ、冷房の消費電力を減らせる。冬場は冷たい外気の影響を遮るため、暖房の使用を抑える。

ガイナは06年に発売したが、売れない時期が続いた。営業部の西村和也さんは「断熱材は厚みがあるのが常識だったため、塗るだけのガイナは受け入れられなかった」と解説する。今は冷暖房の省エネルギー効果が認められ、建築分野の機能性塗料として大手メーカーと肩を並べる出荷量になった。

【国際貢献】

国連工業開発機関(UNIDO)東京事務所が途上国に技術を紹介する制度「STePP」にもガイナが登録された。国際的にもエネルギー改善への貢献が認められた。松島道昌取締役は「SDGs(持続可能な開発目標)達成に先端技術が必要。ガイナは地球温暖化対策に大きな貢献できる」と確信する。初期の開発から三十数年、中小企業の技術に大きな飛躍のチャンスがやって来た。

日刊工業新聞2020年11月6日

COMMENT

松木喬
編集局第二産業部
編集委員

家電量販、プロ冒険家のソリ、ロケットと紹介しましたが、デサントのサッカーシューズにもガイナが使われています。高温となった人工芝からの熱を遮り、選手の足を守ります。省エネルギー大賞も受賞し、中東からも引き合いがあるそうです。一つの技術でもニーズを捉えていると、いろいろな方面から認められると思いました。紙面・ニュースイッチで取り上げてほしいSDGsテーマを募集しています。連絡はニュースイッチの問い合わせまで

キーワード
ガイナ JAXA 断熱 SDGs

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