パーツは1500個!マニアをうならせる大阪発の「超精密鉄道模型」
鉄道模型、細部まで忠実に
コロナ禍で人との接触が制限される中、モノとじっくり向き合う時間が生まれている。Tabuchi Train Models(タブチトレインモデルズ、大阪府高槻市、田淵悠真社長)は、板金や鋳造分野の精密加工会社とのアライアンスで難加工に挑み、2020年6月に鉄道模型を市場投入した。マニアだけでなく“巣ごもり”時の親子のSTEM(科学・技術・工学・数学)教育需要を取り込んでいる。模型開発の現場と市場環境について田淵社長に聞いた。(大阪・坂田弓子)
―開発でこだわった点は何ですか。「細部までリアルに再現し、マニアが納得する模型をつくりたかった。HOゲージ(縮尺87分の1)の7両編成で約30万円と価格は一般的ながら、クオリティーは倍以上だと自負している」
―細かなパーツが多いのが特徴です。「全部で約1500個ある。パンタグラフやコンプレッサー、ブレーキホース、連結器など各種部品をロストワックス鋳造などで可能な限り細部を表現し、車両上に登るための小さな足掛けなども部品にしている」
―精密板金が得意な豊里金属工業(大阪市東淀川区)とアライアンスを組みました。「真ちゅうの車体を精密にプレス加工できる以外に、レーザー加工機を保有していたのが決め手となった。図面データのR形状をプレス曲げで忠実に再現して、窓枠などの抜き加工はプレスでは抜きダレやバリが出るため、レーザー加工したかった。部品が細かいため車体に取り付ける穴も最小直径0・3ミリメートルと微細なだけに、レーザーが不可欠だった」
―購入層は。「マニアもいれば、本職の鉄道マン、手先が器用な脳外科医などだ。コロナ禍で在宅時間が増え、新たな層が加わっている。模型はハンダや電気的知識などが必要。鉄道好きの親が子どものSTEM教育に活用する例も生まれている」
―今後の戦略は。「現在は阪急電車の3300系のみだが、JR西日本113系を開発中。また国内市場は車両が小さなNゲージが75%でHOは15%と非主流だが、欧州などではHOが主流だ。海外を走る車両も製作し、越境ECで海外のこだわりを持つ人の手に届けたい」
車両下部の水切りはわずか0.7ミリメートルの突起。角度や立ち上がり具合までプレス加工の正確さを要求された岩水建二豊里金属工業社長は「細かすぎる。ここまでいるか?と笑った」と振り返る。しかし田淵タブチトレインモデルズ社長の「妥協したくない」という熱意が伝播(でんぱ)し、プレス職人の意地を見せた。欧州ではプレス職人の高齢化・減少で鉄道模型は樹脂製が取って代わりつつある。新たなメード・イン・ジャパンの活躍を期待したい。