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米国による中国DJIのドローン禁輸、国産メーカーは追い風に乗れるか

官公需・インフラ点検で攻勢

米商務省が飛行ロボット(ドローン)の世界最大手、中国DJIに事実上の禁輸措置を発動したことなどを受け、日本でも国産ドローンへの引き合いが増えている。各社とも官公需やインフラ点検需要の取り込みを強化。「国産かどうかを気にするユーザーが増えている」(大手ドローンメーカー)と、思わぬ追い風が国産メーカーへ吹き始めた。

各社が官公需やインフラ点検需要の取り込みを急ぐのは、需要そのものが拡大している上に、中国製ドローンからの代替需要が見込めるためだ。これまでドローンの世界市場は大半が中国製。中でも最大手のDJIが商業用ドローンで約7割という圧倒的なシェアを占めるとされる。しかしその中国製ドローンに対して、最近では欧米はもちろん日本政府からも、安全保障上の理由から排除の動きが出始めている。

【環境対応】

自律制御システム研究所は、煙突点検ドローンや閉鎖環境点検ドローンに加え、環境対応で成長が見込める風力発電機点検ドローンの販売拡大にも力を入れる。11月から、風力発電機の自律飛行点検が可能な国産ドローンの提供を開始。「昨今のカーボンオフセットの社会情勢を考えると、自然エネルギーの需要は今後も増加が見込める」と鷲谷聡之社長は期待を寄せる。

風力発電機は安全運用のため損傷確認の定期的点検が必要とされるが、山奥や洋上に建てられる例が多い。その上、風車の羽根の部分であるブレードは巨大な上に高所にある。それだけに点検には時間がかかり、ドローン導入の利点が大きい。同社では電力鉄塔や原子力発電所、送電線を点検するドローンや、鉄鋼や化学プラントの点検ドローンなども大手企業と提携し、それぞれ機体を開発中だ。

【作業の省人化】

官公需に続き、原発や送電線、港湾施設、鉄道などのインフラ点検でドローン需要が伸びている。これらの施設は日常的に安全点検が必要だが、一方で人員の高齢化が進み、ドローン活用による省人化と安全性向上が急務。その上、安全保障への配慮も欠かせない。

【各社、活発化】

陸上自衛隊の災害用ドローンなどで採用実績があるエアロセンス(東京都文京区)は、最高時速100キロメートルで最大飛行距離50キロメートルを実現したドローン「エアロボウイング」を開発、8月に発売した。長距離飛行の強みを生かし、インフラ点検や官公需でまとまった機数導入を狙う。嶋田悟取締役は「国産を求める引き合いは確実に増えている」と手応えを感じている。同社はクラウドファンディングサイトを通じ、同社のドローンを導入するパートナー企業の募集も始めている。

ソフトバンクと共同で産業向けドローン開発を目指す双葉電子工業も「セキュリティーのため、国産を求める声は高まっている」と最近のユーザー動向について触れる。同社は風速15メートルに耐える高安定性の機体を強みとし「鉄塔などの付近にホバリングして撮影できるため、画像の精度が高い」とアピール。

このほかセンシンロボティクス(東京都渋谷区)やブルーイノベーション(東京都文京区)などもインフラ点検需要の取り込みに動いている。

日刊工業新聞2020年12月29日

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