トヨタ系中堅部品メーカー、デジタル化で仕損額が8割以上も減ったワケ
トヨタ自動車系の中堅部品メーカーが、生産現場のデジタル化に力を入れている。中央発條は現場の稼働状況やコストの「見える化」で成果を上げているほか、フタバ産業やファインシンターはタブレット端末の導入による作業の効率化に取り組んでいる。生産現場のデジタル化により、コストや品質などの競争力を高める。自動車業界の変革期を乗り越え、持続的な成長につなげる。(名古屋・山岸渉)
「2026―27年度をめどに社員の多い世代の退職などで人員が減るが、事業規模を維持し効率的にできるようにしたい」。中央発條の高江暁社長は、デジタル化による効率化に意欲を見せる。
中央発條は生産現場の見える化に力を入れている。象徴的なのが本社(名古屋市緑区)に掲示してある、国内工場の稼働状況やコストなどの情報がリアルタイムで表示される画面。これらの情報はパソコンなどで、現場の工場長から一般の作業者まで手軽に確認できる。「各工場でデータを見てすぐ対策を打てる」(高江社長)メリットがある。
デジタル化の徹底した管理による成果の一つがスクラップの低減だ。18年度に年2回の棚卸しで、製品1個あたりの歩留まり率を含めた鋼材の使用量と製品の在庫数に差異があった。「傷などで全て鉄クズとして計上されていた。毎日毎月と積み重なると何トンを捨てていたのが把握できなかった」(同)。そこでスクラップ改善チームを作り、工場から状況を日々報告させて対策を打つなど管理を徹底した。20年度の仕損額は18年度比で約82%の低減となる見込みだという。
生産のデジタル化への動きは他のトヨタ系中堅部品メーカーでも活発化している。フタバ産業は国内工場で生産実績などを入力するタブレットを導入。21年4月から中国の工場にも導入を広げ、さらにグローバルに展開する方針を掲げる。
ファインシンターも、まず本社(愛知県春日井市)の金型製作部門で、作業者が金型の生産工程などを把握できるタブレットを導入し、作業効率を高める考えだ。
ファインシンターの井上洋一社長は「キーワードは完全無人化で不良が出ないようにする。リードタイムの圧倒的な短縮で中国メーカーに対抗する」と意気込む。21年度末までをめどにこうしたデジタル技術を駆使した“ミライファクトリー”と称するモデルラインを主力の春日井工場(同市)で構築する考えを示す。
自動車業界は大きな変革期を迎えている。競争力強化につなげるため、デジタル化への取り組みが不可欠になっている。