「コロナ変異種」が英国で拡大、日系自動車のサプライチェーンにどう影響?
感染力を高めた新型コロナウイルスの変異種の影響が、英国で深刻化している。欧州各国が英国からの渡航禁止に踏み切るなど物流が混乱。日本政府も23日、英国からの新規入国を停止するなどの水際対策を発表した。フランス政府が23日から英国との条件付き往来を認めたものの、今後の感染状況によって先行きは不透明。英国には日本の自動車産業が多く生産拠点を構えているが、現時点で影響は軽微。ただ欧州連合(EU)離脱に加え、物流混乱が長引くようだと、さらなる痛手となりかねない。
英国では日系自動車大手がそろって生産拠点を構える。現時点で深刻な影響は出ていないが、休暇前倒しなど部品不足に備える動きも出ている。トヨタ自動車は22日から順次、英国とフランスの工場の稼働を止めた。部品在庫に余裕はあるが英仏間の物流が滞っているため、当初は24日からとしていた冬季休業を2日早めた。エンジン工場を22日、完成車工場を23日にそれぞれ停止。フランス工場も22日に操業を止めた。
ホンダはスウィンドンにある自動車の生産工場が、すでに9日から3日間稼働を停止。輸送の遅延に伴い部品が不足したためだ。ただ14日の再開後は22日まで稼働し、予定通り23日に冬期休業に入った。日産自動車もサンダーランド工場は予定通り19日に冬期休業に入った。3社とも休業後は通常通り2021年1月4日から稼働再開を予定する。
部品メーカーへの影響はまだ見られない。車載電池工場を持つエンビジョンAESCグループ(神奈川県座間市)は「現在のところ物流で困っていることはない。在庫や材料も途切れていない」(広報担当者)という。英国に車体部品工場を持つジーテクト、4輪車用シートの生産拠点を持つテイ・エステックとも大きな影響は出ておらず、生産が止まるなどの影響がないよう対策を進めるという。
政府、英からの外国人を入国停止
政府は英国からの入国者に対する水際対策を、24日から当分の間強化する。外国人の入国を一時停止し、7日間以内の短期出張からの帰国者について認めている14日間の待機の免除措置も、英国からの場合は停止する。また英国から帰国する日本人に、出国前72時間以内に受けた検査の証明書を、入国時に提出するよう求める。
加藤勝信官房長官は23日の会見で「日本への帰国・再入国を前提とする英国への短期渡航は、当分の間自粛するようあらためてお願いする」と述べた。英国以外からの入国についても「各国での変異や感染の状況を見極めつつ、必要な水際対策を機動的に講じていきたい」と強調した。
現地の日系企業の動向については、経済産業省の中堅・中小企業向け支援窓口「ブレグジット対応サービスデスク」も活用して「最新情報の提供や相談対応を、丁寧に進めていきたい」と述べた。
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