コロナ禍で伸びる塩ビ需要。内需縮小も外需は強い
新型コロナウイルス感染拡大で衛生に対する意識が高まる中、床シートや仕切り用途の塩ビの需要が伸びている。塩ビの出荷は海外ではインフラや住宅向けに好調な半面、内需は縮小傾向にある。関連業界は海外での新たなニーズに注目し、製品の創出や拡販を図る動きが活発だ。(江上佑美子)
【内装品向け】塩ビ工業・環境協会(VEC)の進藤秀夫専務理事は「医療施設などで、抗ウイルスや抗菌性のフィルム、シートの需要が増えている」と話す。新築住宅などの分野でも、2021年以降、需要増が見込まれるという。
抗菌製品技術協議会(SIAA)は抗菌加工に加え、2019年に抗ウイルス加工製品への「SIAAマーク」運用を始めた。新型コロナを契機に、資材メーカーなどによる接触感染防止を目的とした内装品や日用品の発売が相次いでいる。
【マーク取得】リケンテクノスは窓やディスプレーの保護用途で、同マークを取得したフィルムを展開。オカモトも11月に発売したブックカバーなどの塩ビフィルムにおいて、同マークを取得している。
リーマン・ショック以降、国内出荷量は横ばいだ。一方「インフラ投資を増やしているアジアを中心に、世界需要は旺盛」(進藤VEC専務理事)。日本にとって最大の輸出国であるインドでの使用量は1995年以降、年平均で9・0%増となっている。人口増加を背景に、灌漑(かんがい)や上下水道、住宅向けの需要が伸びている。「需要の伸びに国内の供給能力が追いつかず、輸入に依存している」(VEC)状況だ。中国での使用量もパイプや建材用途を中心に、年平均11・3%の伸びを示している。
定期修理の影響もあり、塩ビ樹脂の11月の国内生産量は前年同月比4・6%減の13万1474トンと、4カ月連続で前年比で減少した。出荷総計は同11・8%減の13万971トン、うち輸出量は同18・8%減の4万7162トンで、7カ月ぶりのマイナスだった。
【需給はタイト】コンテナ不足による運賃上昇や、米国でのハリケーンによる生産トラブルなどの不安材料により、需給はタイトな状況だ。
VECの斉藤恭彦会長(信越化学工業社長)は「4―6月は新型コロナで今までと違う状況だったが、その後は回復が早かった。世界的に需要は底堅く、着実に伸びている」と話す。