ニュースイッチ

カーボンナノチューブを金属表面に定着。導電で精密機器の粉塵対策に

カーボンナノチューブを金属表面に定着。導電で精密機器の粉塵対策に

新分野に売って出る/ワイピーシステム CNT金属表面処理技術を確立

金属表面処理を手がけるワイピーシステム(埼玉県所沢市、吉田英夫社長)は、カーボンナノチューブ(CNT)の有効活用に成功した。特許成立を受けて新市場に乗り出す。具体的には表面処理の皮膜にCNTを高密度で均等に分散させ、金属表面に定着させる技術を実用化。CNTは高い導電性や耐熱性などの特性を持つため、表面処理と同時にそうした機能も付加できるようになる。

特に期待するのが導電性だ。「一般的な高機能コーティングには導電性がない。例えばフッ素樹脂加工を施した表面に電気を流せるとなったら衝撃が走るだろう」(吉田社長)と言うほどだ。有望な用途として、まず想定するのが船体や船底の表面処理。導電させることで海洋生物の付着を防げる。「フジツボや貝殻が抵抗になって航行する船の燃費が悪くなる。除去するには船をいったん陸に揚げ、塗装まで全部はがさないといけない」(同)問題を解消。諸費用を大幅に節減できる。

もうひとつは精密機器の粉じん対策。導電させることで表面に静電気が発生しなくなりホコリを吸い寄せなくする。「特に真空装置は静電気を嫌がる。ここがまったくの新市場になる」(同)と期待する。光学機器や半導体液晶製造装置などのメーカーにサンプル提供を始めており、順調なら2021年春にも実用化される運びだ。

耐熱性や耐候性にも優れるため、風雨や日光、塩害に負けない高級建材や、高熱にさらされる自動車部品などの需要が見込める。さらに「大気がなく、温度差の激しい宇宙空間にも耐えられる」(同)として人工衛星やロケットの市場も狙う。

こうした技術開発に至ったのも独自の特殊メッキとCNTの相性が良いことを指摘してくれたアドバイザーらの貢献がある。吉田社長は「仲介してくれた埼玉県産業振興公社やデータを頂いた東京農工大学など、産学官連携の成果だ」と多くの関係者に謝意を示す。(川越支局長・大橋修)

日刊工業新聞2020年12月11日

編集部のおすすめ