SDGs掲げる企業、就活生に思いが届かない理由
甲南大生に聞く
持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みを発信して優秀な学生の採用につなげようと考える企業が増えている。しかし、甲南大学の広渡潔教授の協力を得て学生に聞くと、SDGsは就職先の選択で重視されていなかった。むしろ企業のSDGsの取り組みが「具体的ではない」と厳しい見方をしていた。学生は自身の方がSDGsに精通しており、企業からの発信も不足しているとみているようだ。
甲南大マネジメント創造学部の学生24人にアンケートに回答してもらい、その結果を基に取材した。学生はSDGsの講義を受講しており、ほとんどが就職活動を控えた3回生だった。
SDGs達成に貢献すると宣言した企業のイメージを選択肢から選んでもらうと「良い」と「多少は良い」の合計が23件あり、良い印象を持っていた。
就職先を選ぶ基準となりそうな項目を示して優先する順に1―7番を付けてもらうと、1位の回答で「やりがい」(11件)と「ワークライフバランス」(10件)が多かった。理由を聞くと「休日や有給休暇をとりやすい会社は、働きやすいから」「仕事をずっと続けるつもりなので、やりがいを求めたい」「やりがいがあると自分の成長につながる」という答えが返ってきた。
続く2位回答には「経営理念、ビジョン、方針」(5件)が3番目に入った。ベンチャーへの就職を目指す学生は「同じビジョンを持った仲間がいると働きやすい。自己分析の結果でも理念やビジョンが大切と分かった」と説明した。
一方で「SDGs達成に貢献できる企業」は6位に6件、7位目に10件と下位に集中した。「自分に直接、関係するワークライフバランスややりがいを優先したい」「大切と理解していても、自分とのかかわりが分からない」というのが主な理由だった。
企業のSDGs関連の発信についての印象を記述してもらったところ、「実際にゴールに貢献しているのか分からない。バッジを付けている人が増えたが、SDGsを分かっているのだろうか」「社員一人ひとりがSDGsを意識して働いているようには感じられない。企業のSDGs情報はあくまでも参考」と冷ややか見方が目立った。ある学生は「学生の方がSDGsを勉強していて、企業が追い付いていない」と分析した。
また「事業にどのように関係するのか明瞭ではない。説明会でも具体的な回答を得られない」「企業にSDGsへの取り組みをたずねたら、業界団体がやっていると回答された」と証言する学生もいた。
一方で「取り組みのない企業はあまり信用できない」というように、SDGsの発信を評価する回答もあった。また「意外な取り組みがあると企業の個性が出ていると思うのでおもしろい。ただSDGsに取り組んでいる企業をあまり知らないので、もっと大々的に発信してもよいのでは」との要望も出た。
SDGsを教育する大学が多く、学生も詳しくなっている。SDGsを通じて学生の評価を高めたい企業は、具体的な行動と発信が求められるようだ。