挑むはSDGsのど真ん中! 大学発ベンチャーが脱炭素で化学肥料製造へ
ラオスで脱炭素アンモニア製造
つばめBHB(東京都中央区、渡邊昌宏社長、045・744・7337)は、ラオスで水力発電を利用したオンサイト型アンモニア合成プラントの事業化調査(FS)を始める。二酸化炭素を出さないエネルギーでアンモニアを生産し、農業用の化学肥料を製造する計画だ。成功すれば食料生産とクリーンエネルギー活用、開発途上国での産業基盤整備の3テーマに資する投資になる。大学発ベンチャーが国連の持続可能な開発目標(SDGs)のど真ん中に挑もうとしている。
「これから日本は世界に環境技術を発信していく。大学発ベンチャーとして、貢献しないわけにはいかない」と渡邊社長は気を引き締める。同社は低温低圧で反応が進むアンモニア合成触媒をもつ。東京工業大学の細野秀雄特命教授らの触媒技術を事業化した。
現行のハーバー・ボッシュ法では400―600度Cで200―1000気圧の高温高圧で水素と窒素を反応させアンモニアを合成する。この温度を下げ、圧力は5気圧前後まで抑えられた。圧力が下がると金属の水素脆化を抑えられる。装置の耐圧設計を簡素化でき、途上国の技術者に運用しやすくなる。横山壽治執行役員最高技術責任者(CTO)は「操業コストの大部分を高圧を作るポンプが占めていた」と説明する。触媒の力で圧力が下がると、設備の初期投資とランニングコストの両方に効いてくる。
そしてプラントが小型化され、ラオスのような山間の水力発電所に併設可能になった。水を電気分解して水素を取り出し、空気中の窒素と反応させてアンモニアにする。中村公治執行役員は「水素への投資で水素供給装置が確立された。窒素も確立済み。おかげで触媒の技術力で勝負できる」と説明する。水素社会を支える技術がグリーンアンモニアを支えた。
ラオスでは2万―3万トンのアンモニアを作り、化学肥料を製造する計画だ。このモデルはアンモニア輸入国に広く展開できる。途上国の農業を支えるインフラを目指す。