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ダイソンを支える日本の「モーターコア」技術、北九州の企業が信頼に応える

ダイソンを支える日本の「モーターコア」技術、北九州の企業が信頼に応える

プレス機の稼働状況を監視

日本でも高い人気を誇る英国の電気機器メーカー・ダイソンを支える企業が吉川工業ファインテック(FT=北九州市小倉北区)だ。ダイソンの多くの製品に市内で製造したモーターコアが採用されている。吉川工業FTは北九州産業学術推進機構(FAIS)と連携して、プレス機の稼働状況をリアルタイムでグラフ化する取り組みを始めた。

鉄鋼関連が主力の吉川工業(北九州市八幡東区)全額出資子会社の吉川工業FTは、電子部品や車載・家電用モーターコア金型を製造している。「製造からプレス加工まで一貫して行う点」(林勝之取締役金型製造部長)が強みで、高機能を誇るダイソンからの信頼は厚い。一方でIT化の遅れを指摘されることが多く、製造現場のデジタル化が課題だった。

最初の取り組みとしてプレス機の稼働状況を、IoT(モノのインターネット)を使って監視するシステムを整えた。グループ会社の吉川システック(北九州市八幡東区)の生産管理システムを利用してリアルタイムでグラフ化。エクセルデータによる金型ライフサイクルの見える化、装置の停止をメールで伝えるシステム開発、記録のペーパーレス化を実現した。

稼働監視は超小型シングルボードコンピューターのラズベリーパイ(ラズパイ)を利用してコストを抑えた。情報の見える化はリアルタイムでの監視と故障予知にもつながると期待する。複数の装置の稼働状況を把握することで、パンチとダイの寿命までわかるようになった。今後は人工知能(AI)導入を進めるなど現場のデジタル化を加速する。

2021年春からは自動車向け駆動用モーターコアの量産も始める。搭載車種など詳細は明らかにしていないが、今以上の生産性向上が求められる。林取締役は「IoT導入で10%の生産性向上を実現したが、20%を目指す。データを解析して競争力強化につなげたい」と意欲的だ。

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