勘と忍耐はもう古い? 酒造りをIoTで支援

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室の中のこうじの温度をスマホで見える化した

酒造り、勘と忍耐から脱却

1844年創業の溝上酒造(北九州市八幡東区、溝上智彦社長、093・652・0289)は、IoT(モノのインターネット)を使った製造工程管理を進める。そこには溝上社長が目指す「うまい酒」造りへの強いこだわりがある。

溝上社長は1995年に8代目社長に就任した。すでに当時から焼酎や洋酒との競争、安価な日本酒の普及など市場では良質な日本酒離れが深刻だった。危機感を強めた溝上社長が出した結論が製造現場のデジタル化だった。

酒造りは10月から翌年3月までの6カ月間が仕込み期間となる。この間、原材料となるこうじやもろみの発酵工程で継続した温度管理が欠かせない。こうじは室(むろ)と呼ばれる外気を防ぐ室温35度Cの専用の部屋で2日間かけて作られる。初日は種こうじをふりかけ30度Cで保温し、2日目は専用の箱に移しこうじ菌が増殖することで9時間後に35度C、13時間後に40度C、16時間後には43度Cまで高め、43度Cを10時間維持すると酒の原料のこうじが完成する。

この間、作業者は長時間現場を離れることができない。早朝から深夜まで監視が必要で、高温になると調整のため撹拌作業を強いられる。勘と経験に忍耐が求められる熟練技だが人手不足の業界では深刻な問題だ。

同社は北九州産業学術推進機構(FAIS)と連携して、IoTを使って温度監視する装置を開発、実証実験を始めた。複数のセンサーを設置し、発酵過程の温度データをクラウドシステムに収集・蓄積してスマートフォンで見える化した。可視化したことで作業員は頻繁に酒蔵で温度を確認する必要がなく、外出でき睡眠が取れるようになった。

また年間醸造の道も開けた。同社は日本酒専業で焼酎などを製造しないため、作業は秋から冬に限られている。溝上社長は「年間生産できれば在庫を減らすことができ、雇用問題も解決する」として、IoT完備の新工場建設も検討している。

日刊工業新聞2020年12月2日

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