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英国で承認のコロナワクチン。日本の接種準備はどこまで進んでる?

国内、「特例」で迅速接種も

新型コロナウイルスワクチンの使用を英国政府が世界で初めて認めた。新型コロナワクチンをめぐっては、製薬企業が相次いで欧米の規制当局に承認申請し、米国でも早期接種の実現に向けた審議が始まる。2019年12月に中国から始まった新型コロナウイルスの世界的流行だが、ワクチンの実用化でようやく根本的に立ち向かう手段を得ることになる。日本国内でも、ワクチン接種を広く行うための制度構築が進む。(安川結野)

【英政府、使用承認】

英国政府は2日、米製薬企業ファイザーと独バイオ企業ビオンテックが開発する新型コロナワクチンについて、安全性と有効性が確認できたとして使用を承認したと発表した。承認を受け、7日にも世界に先駆けて接種を開始する見込みだ。すでに両社は米国食品医薬品局(FDA)にも承認申請をしており、10日(現地時間)にワクチンとバイオ関連製品に関する諮問委員会を開き、一時的に使用を認めるEUA(緊急使用許可)を発令するかを審議する。また、両社は11月30日(同)に欧州医薬品庁(EMA)に対して条件付き承認申請を提出しており、英国に続き、早ければ年内にも欧米での接種が可能となる。ファイザーとビオンテックは承認取得を視野に入れ、年内に最大5000万回分、21年末までに最大13億回分のワクチンを世界で生産することを見込んでおり、EUA取得から数時間以内に供給を始める準備を進める。

【年内に2000万回分】

また米製薬企業モデルナも、開発する新型コロナワクチンについてFDAとEMAに対してそれぞれEUAと条件付き承認を申請したと発表した。EUAは17日(現地時間)に開かれるFDAの諮問委員会での審議を予定しており、承認を受けた場合、年内に約2000万回分のワクチン供給を見込む。

日本政府は、ファイザーとビオンテック、モデルナが開発するそれぞれの新型コロナワクチンについて、合わせて1億7000万回分の供給を受けることで合意を結んでいる。これらの新型コロナワクチンが欧米で承認を取得すると、海外の承認実績を元に国内での使用を認める「特例承認」の対象となり、申請があれば迅速に接種が開始できる可能性がある。

目前に迫るワクチンの接種に向け、国内では円滑に接種を行うための整備が進む。改正予防接種法が2日の参議院本会議で可決・成立した。新型コロナワクチンの接種費用を国が負担することや、健康被害が生じた場合の賠償を製薬企業の代わりに国が負担する契約を結べることなどを盛り込んだ。ワクチン接種を希望する人や供給する企業へ救済措置を講じることで、接種の後押しを狙う。

【しっかり進める】

加藤勝信官房長官は3日の会見で、日本での新型コロナワクチンの承認をにらみ、「ワクチンの特徴を踏まえた接種体制の整備をしっかり進めたい」と述べた。

日刊工業新聞2020年12月4日

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