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紙1枚が環境を救う!大昭和紙社長の「一点突破」

大昭和紙工産業(静岡県富士市)の斉藤了介社長は「紙で環境対策室長」を兼務する。名称の通り、環境問題の解決に貢献する紙製品を提案するマーケティング部署であり、経営トップが室長になることで「環境問題解決カンパニー」としての姿勢を明確にした。

同社は紙袋や紙容器の大手。プラスチックの過剰使用を見直す動きがあり、同社には追い風だが「環境にやさしい」といった表面的な訴求では通用しない。プラスチック製よりも高価だと値下げを求められたため「割高でも納得して採用してもらえないとダメだ」(斉藤社長)と痛感する。

それに紙もエネルギーを消費して製造している。水滴から守るためにプラスチック製フィルムをコーティングした紙袋もある。営業先で紙製品の環境負荷を指摘され、返り討ちに遭うことも。斉藤社長は「どれだけ環境配慮を徹底できるのか」と気を引き締め、自身の手帳に「完全理論武装」と書き込む。

“徹底”の一例とし、森林整備に協力して大気中の二酸化炭素(CO2)増加を抑制した証明付の紙袋を製品化している。採用した店舗も環境貢献をPRできる。また10月には、同社の9カ所の営業拠点で消費した電力によるCO2排出量をゼロ化した。国の制度を活用し、宮城県内の家庭から太陽光発電による削減効果を購入して自社の排出分を打ち消し“CO2ゼロオフィス”を実現した。

技術でも環境貢献を徹底している。使用後に水滴保護フィルムをはがせる紙袋を開発した。素材別に分別可能となり、紙袋をリサイクルできる。紙だから環境配慮を当然と思わず、「環境貢献の追求によって紙袋に付加価値を付ける」(同)と意気込む。

斉藤社長は社員に環境配慮の徹底を訴え続けている。「会社の本当の強みを作るには一点突破しかない。環境対策が必ず強みになる」と信念を持つ。かつてプラスチック製袋に紙袋が駆逐された苦い経験があり、環境配慮を“絶対的な強み”にする。

日刊工業新聞2020年12月4日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
強みを作りたい会社は「一点突破」が良いのでないでしょうか。あれも・これもというよりも、一つの分野について社長が言い続ければ、社員の意識も集中するはずです。「総合」や「ソリューション」を連発されても、よくわかりません(おそらく社内も)。斉藤社長は「環境、環境と言い続けることも忍耐がいる」と言っていました。しかし社員が自発的に情報発信をしてくれるようになったそうです。紙面やニュースイッチで取り上げてほしいSDGsテーマはありませんか。何かあればニュースイッチの問い合わせまで。

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