国内最後のガスパイプラインが来春稼働、東京ガスはどう生かす?

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日立LNG基地で建設中の2号LNGタンク(円筒の建物・左側)

東京ガスの日立LNG(液化天然ガス)基地(茨城県日立市)から茨城県神栖市までを結ぶ全長92キロメートルのガスパイプライン「茨城幹線」が、2021年春に供用開始を迎える。10月22月にすべての導管の接続が完了。18年1月に着工してから34カ月で建設を終えた。茨城県東部の南北をつなぐ茨城幹線の完成により、北関東圏を一周するループができあがる。東京ガスにとって国内では最後のパイプラインの建設だ。(編集委員・川口哲郎)

【輸送能力1割増】

日立LNG基地から東京までのガスの供給は現状、茨城県日立市から西に栃木県南部を抜け、茨城と埼玉の県境を回るルートしかない。一方、工業地帯の茨城県鹿嶋市へは、袖ケ浦LNG基地(千葉県袖ケ浦市)から千葉を北東に走るパイプラインが唯一だ。茨城幹線の完成により、千葉、茨城、栃木、埼玉のパイプラインが環状に結ばれる。

幹線ループ化によってガスの供給安定性が向上し、ガス輸送能力も増す。茨城幹線建設事務所の飯村博忠所長は「ネットワーク全体で1割程度の増強を見込んでいる」という。東京湾岸の袖ケ浦LNG基地と扇島LNG基地(横浜市鶴見区)、根岸LNG基地(横浜市磯子区)の3カ所を起点とする東京圏のループに加え、日立LNG基地を含めた第2のループとなる。日立LNG基地は2号LNGタンクを建設中で、茨城幹線と同じ21年3月に稼働を予定する。同基地のLNG供給力は2倍になる見込みだ。

【複数工事同時に】

導管の溶接を念入りに検査する(東京ガス茨城幹線)

茨城幹線は道路の下に導管を埋設している。茨城県鹿嶋市から同水戸市まで海岸沿いに北上する国道51号も占用した。「通常は取得が難しいが、道路管理者へ工事方法やスケジュールなどを丁寧に説明し、理解頂けた」(飯村所長)という。

道路の幅1・1メートル以上、深さ1・2メートル以上を掘削し、直径60センチメートルの導管を設置している。導管は1本当たり長さ12メートルで、これを溶接して連結する。作業には管7周分の溶接が必要で、1カ所当たり2時間20分かかる。これを順に作業していては膨大な時間を要するため、複数の工事を同時進行で進めた。

全長92キロメートルを8工区に分け、7工区をJFEエンジニアリング、残り1工区を東京ガスエンジニアリングソリューションズが施工する。各工区で同時に導管を埋設し、多いときには35―36カ所で工事が同時進行した。約1000人が工事に携わったという。

河川を横切る際はシールドマシンと呼ぶ掘削機で、まず地上から真下に掘り進めて立て坑を空ける。一定の深さから真横に掘り、川の下をくぐるようにトンネルをつくる。茨城幹線ではシールドトンネルが6カ所ある。

建設ルートには、ひたち海浜公園や鹿島スタジアム、大洗海水浴場などがあり、イベントの繁忙期は施工を避けることなどを事前に調整した上で、スケジュールを組んだ。

34カ月の工期は東京ガスが手がけたパイプラインの中でも短く、着工から計画通りに進んだ。飯村所長は「10年くらい絶えることなく幹線を建設してきた。施工会社の管理や溶接の技術、行政への説明など知見の積み重ねが大きい」と評価する。

今後は11月下旬から12月中旬まで接続が完了した導管内へのガスの充填と気密試験を実施する。次いで21年2月下旬から3月にかけて自主検査と第三者機関による使用前検査を実施し、これに合格して供用開始の運びとなる。

【知見生かせるか】

茨城幹線の開通で国内の大規模なパイプラインは最後となる。東京ガスは二つの環状ネットワークを基軸に自治体や他社との連携を強化し、天然ガスインフラの強靱(きょうじん)化に重点を移す。幹線の建設で蓄積した知見やノウハウも貴重な資産であり、今後どのように生かすかも求められそうだ。

日刊工業新聞2020年11月20日

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