労災保険給付の聴取調査に音声文字変換…“デジタル厚労省”の領域はどこまで広がる?
厚生労働省はデジタル技術を活用して労働基準行政のプロセスを再構築する。離職後の健康管理支援業務を全国で標準化してネットワークで結ぶ計画のほか、労災保険給付のための聴取調査には音声文字変換技術を導入する実証の準備をそれぞれ始める。行政サービスの向上と業務改革を一体的に進める。2021年度から順次、業務の実態を調査し、予算要求と調達を経て23―24年度の開発着手を視野に実用化を目指す。
国は重度の健康障害が発生する恐れのある業務を経験した離職者には健康管理手帳を交付し、健康診断を行っている。計画では、都道府県に置いた労働局が離職者の情報を管理するプロセスを専門業者の知見を取り入れながら見直して標準化。ネットワークで結び、離職者に対するサービスの質を向上させる。
健康管理手帳の保有者は全国合計で約7万人。現在、離職者の情報は労働局が個別の手法で管理しており、転居者の把握や年1―2回行う健康診断の案内漏れを防ぐための確認にかかる負担の軽減が課題となっている。
労働基準監督署による労災保険給付聴取調査は、給付の判断をするため勤務実態や災害発生状況を一対一の対面で聞き取る業務。
新たに音声文字変換技術を導入し、聴取時間を現在に比べ2分の1に短縮させることを想定。費用対効果を見極めながら導入技術を詰める方針。調査担当者は聞き取りに専念できるほか、対面時間を短縮できれば申請者の負担軽減にもなる。
労災保険給付聴取調査は本人や関係者から聞き取った情報を申請者一人称の文章に編集する必要から1人当たり3―4時間かかる。
今回の業務プロセス再構築は昨年末に閣議決定されたデジタル・ガバメント実行計画を踏まえた取り組み。厚労省は25年をめどに労働基準行政システム全体を更改する方針だ。
日刊工業新聞2020年11月20日