住宅メーカーが作った地下室シェルター、コロナで増えた平時需要の中身

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鋼製ユニットを組み合わせてシェルターを設置する(イメージ=サンヨーホームズ提供)

サンヨーホームズは戸建住宅向けの多目的シェルター「Multi Shelter(マルチシェルター)」を手がける。地下室設置型で災害時と平時両方の利用を想定している。新型コロナウイルス感染症に伴い多様な働き方や、新しい生活ニーズに応えるとともに、激甚化する自然災害からの避難所としての利用を提案する。

【約2週間で設置】

地下室のメリットは地震の揺れを地上の約半分に抑制し、家具の倒壊や窓ガラスが割れる不安を軽減できる点だ。台風による飛来物の心配もない。水害に対しても地盤面より1メートルかさ上げすることで家全体への浸水を防ぐ。最新の排水ポンプ機能により、1時間当たり150ミリの豪雨でもドライエリア(地下に併設する庭)に水がたまらない。

マルチシェルターはユニット式で、比較的簡単に導入が可能。工期は一般的な鉄筋コンクリート構造が2―3カ月かかるのに対し、マルチシェルターは約2週間で設置できる。強靱(きょうじん)性に優れた鋼製・型鋼材による耐震型構造とラーメン構造を合わせた特許工法で、50トンの土圧・水圧に耐える。ブロック壁はヒビが入りやすく、水の浸入によるカビやにおいが発生しやすいが、断熱材と鋼製による防水で高温多湿を防ぎ、快適な空間を実現する。

コロナ禍の状況下で住まいの重要性が高まる中、「都心部の限られた敷地にもう一部屋欲しいというニーズが増えている」(城戸雄弘常務執行役員)。しかし一般的な2階建て戸建住宅の敷地面積(約80平方メートル)の土地で3階建てに拡張することは、建築基準法で規制されている。

【新たな住宅提案】

一方、規制が緩和されている地下室では、家全体の延べ床面積を約1・5倍に広げられる。改正前の建築基準法では地下室の設置が難しく、日本の気候特性とも相まって地下室が国内の住宅文化に根付かなかった。法改正を機に「高温多湿に強い構造や、防災面での有用性が理解されれば、地下室シェルターが新しい住宅提案として広がるのではないか」(城戸常務執行役員)と期待する。

ライフスタイルに応じてさまざまな活用が考えられる(イメージ=サンヨーホームズ提供)

また、東京大学の「日本の地温データ」によると、地下室は年間の温度差が外気の3分の1、7・7度Cと小さい。このため空調の使用頻度を抑え、光熱費を削減できる。遮音性に優れ、防音効果も高い。

音楽やトレーニングを楽しむ趣味の部屋、テレワークスペースなど新しいライフスタイルにも対応できる。水回り設備を導入するなどで「コロナ感染者を隔離する部屋としても有効」(同)とみる。

マルチシェルターは延べ床面積20―35平方メートル(6―10畳程度)。販売価格が750万―900万円を想定。新築の戸建住宅向けに、年間平均販売戸数である250―300戸への導入を目指す。

現在、国内における地下室シェルターの普及率は0・1%未満にとどまる。サンヨーホームズではマルチシェルターをきっかけに、新しい住宅の防災スタイルを広める考えだ。(大阪・池知恵)

日刊工業新聞2020年11月16日

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