レーシングカーの知見活用、導入広がる異色の「津波避難シェルター」

タジマモーターコーポレーションが開発

 世界的なレーサー「モンスター田嶋」率いるタジマモーターコーポレーション(静岡県磐田市、田嶋伸博会長兼社長、0538・66・0020)に、レーシングカーのノウハウを生かして開発した異色の製品がある。津波避難用シェルター「浮揚式津波洪水対策用シェルターSAFE+(セーフプラス)」は、津波避難タワーの約20分の1のコストで導入可能。津波被害が予想される自治体で導入が広がっている。

開発の契機


 「浮いて助かる、という選択肢を作る必要があった」。開発に携わった防災事業部・特装事業部の加賀利昭課長代理は、開発のきっかけについてこう語る。東日本大震災後、海岸沿いの低地に立地する同社には同規模の地震が起きた場合、約10分以内で津波が押し寄せるとの予想が出た。周囲には高台が無く、液状化現象なども重なれば全員が無事に逃げ切れる可能性は決して高くない。社員を助ける手段としてセーフプラスは誕生した。

 素材に選んだのは、レーシングカーの素材として一般的だった繊維強化プラスチック(FRP)。「“軽くて強い”という条件はレーシングカーと同じ」(加賀課長代理)と、社内の船舶設計士などと開発を進めた。シェルターの上半分はFRPとウレタンをはさんだ軽くて断熱性がある構造、下半分はFRPをベニヤのように何層にも重ねた単板構造。上部が軽いため万が一転覆しても元に戻りやすく、底がとがった形状の船舶より横揺れに強い点が特徴だ。

 さらに天井の高さは成人男性が立ち上がれる約190センチメートル。天窓から採光するため平時は建物の離れのように使用できる。「普段使いすることの良さは、備蓄食料のチェックや不具合の発見がすぐできること」と加賀課長代理。製品を納入した静岡県焼津市の顧客は庭に設置したセーフプラスを読書部屋として使っているという。

新たな活用法


 海沿いの土地などに設置することが一般的なシェルターだが、このほど新たに「トレーラーに積んで被災地を移動する」という新たな活用法が誕生した。災害派遣医療チーム(DMAT)から災害医療の拠点としてのシェルター応用の提案があったのだ。日中は医療拠点として、夜間は医師の仮眠所などとしてセーフプラスを使用。救護中に万が一津波が来た時に逃げ込めば二次災害を防ぐこともできる。

 地盤奥深くまで杭(くい)を打つなど高い要求があるため、津波避難タワーの導入コストは現在約1億円。過疎化が進む集落では将来の人口見通しなどからタワーが設置されない例が出ており「ハザードマップの空白地帯」となっている。

 加賀課長代理は「津波避難の原則は山など高台に逃げること」としつつも「弱者が生き残るための最終手段として、乗り込みやすく不安のないものを提供したい」と意気込む。

 現在、福祉施設など向けに特注品として生産している車椅子向けシェルターを標準製品のラインアップに加えることが目下の目標だ。

「600シリーズ」の内観。天井高約190cmで天窓を設置するなど開放的な内観

(文=浜松・竹中初音)

日刊工業新聞2019年3月11日

  

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