「今までの大統領候補でもっとも過激」、バイデン氏の環境・エネルギー政策に日本企業は?

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バイデン次期大統領候補(公式ツイッターより)

パリ協定復帰・2兆ドル投資

現職のトランプ大統領は温暖化対策の国際ルール「パリ協定」からの脱退を表明し、国際社会に動揺をもたらした。ただバイデン氏も、トランプ氏とは異なる衝撃を与えることになりそうだ。環境・エネルギー政策に詳しい東北大学の明日香壽川教授は「今までの大統領候補でもっとも過激」と表現する。

バイデン氏は気候変動政策をまとめた「バイデン計画」を掲げて選挙を戦った。パリ協定復帰はもちろん、米国として2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロの達成をビジョンとし、クリーンエネルギー関連に2兆ドルを投資する。工程表も示しており、就任初日に中・小型車の100%電気自動車化などの大統領令に署名する。

環境外交もバイデン計画の目玉だ。就任100日以内に気候サミットを開催して主要排出国に目標強化を約束させ、中国には石炭輸出補助の中止を要求するなどとしており強気の姿勢を示す。努力が不十分な国からの輸入品に賦課金を課す「国境炭素調整賦課金」も打ちだし、波紋を呼びそうだ。脱炭素に“消極的”とレッテルをはられた国の企業はビジネスに影響する。実現は難しいだろうが、地球環境戦略研究機関の田村堅太郎プログラムディレクターは「政策的なシグナルが大きい」とし、他国への圧力となるとみている。

自動車産業で100万人の雇用創出を打ち出すなどバイデン計画は失業対策にも目を配る。経済政策として機能するようなら、米国企業を活気づかせる。小泉進次郎環境相は10日、経団連幹部との懇談後、「日米同盟は脱炭素同盟となる。日米の企業同士、都市間の協力が出てくる」と期待を示した。

一方、バイデン氏はエネルギー産業に厳しい姿勢を見せる。化石燃料業界への規制強化を政策に掲げており、石油・ガス市場は一定の影響を受けそうだ。シェールオイルを規制する考えで、連邦保有鉱区での新規の掘削・フラッキング(水圧破砕法)取りやめを言及する。ただ、「連邦保有地鉱区のシェールオイル生産量は私有地に比べ非常に少なく、全体の生産量に与える影響は必ずしも大きくはない」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)との指摘もある。

米国沖合の新たな油ガス田開発も認めない方針だが、開発が進むメキシコ湾(東部を除く)の沖合鉱区のリースセールは継続するとみられる。それでも大筋としては規制強化の方向で、生産量の減少を招く可能性がある。

これら政策は石油・天然ガスの需給引き締めに働くが、緩和の材料もある。外交面でイラン核合意への復帰を唱えているからだ。石油連盟の杉森務会長は「イラン核合意復帰はイラン原油の拡大につながるため、大きな要素」と分析。イランの原油生産量は日量470万バレルと世界合計の5%を占める。イランが原油の輸出拡大に動けば、原油価格への下げ圧力は無視できない。

トランプ政権から大きな転換が予想されるバイデン氏の環境・エネルギー政策。日本企業に脅威となるのか、それとも商機となるのか、注視が必要だ。

日刊工業新聞2020年11月11日

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