もしバイデンが米大統領になったら、EUとの関係はどうなる?

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バイデン候補とハリス副大統領候補(バイデン公式ツイッターより)

貿易摩擦、新たな火種も

11月3日に迫る米国の大統領選挙の世論調査では、民主党のバイデン候補の支持率が共和党の現職トランプ大統領を大きくリードしている。選挙戦の行方は予断を許さないが、バイデン氏が次期大統領に就任すれば、経済政策では大企業や富裕層向け増税と歳出拡大路線に舵(かじ)を切り、外交政策では米国第一主義から国際協調路線に復帰する公算が大きい。では、トランプ政権下で大きく悪化した米欧関係には、どういった変化が予想されるだろうか。

まず、バイデン候補は地球温暖化対策の国際的な枠組みであるパリ協定への復帰やクリーン・エネルギーの推進を公約に掲げている。気候変動対策を最重要政策と位置付ける欧州連合(EU)は、世界第2位の二酸化炭素排出国による方針転換を大いに歓迎するだろう。また、米国と欧州は次世代通信インフラ網への中国製品の排除などをめぐって温度差があるものの、中国の国家資本主義や技術覇権への警戒を強めている点で一致する。

民主党政権となっても、米国の対中強硬姿勢に大きな変化はないとの見方が多い。ただ、トランプ政権が制裁関税を武器に2国間取引を重視したのに対し、バイデン氏は同盟国と連携して中国にルール順守の圧力をかける方針とみられ、対中包囲網へのより積極的な関与が求められそうだ。安全保障分野では、北大西洋条約機構(NATO)を始めとした同盟関係の修復やイラン核合意への復帰が予想され、欧州諸国との関係改善につながることが期待される。

だが、米国でバイデン氏が率いる民主党政権が誕生した場合も、米欧関係には火種が燻(くすぶ)る。コロナ危機からの経済復興に充てる財政資金を加盟国に提供するEUの復興基金は、財源の一部を新税で賄う方針だ。

環境規制への取り組みが不十分な国からの輸入品に事実上の関税を課す国境炭素税や、米国のハイテク企業が主な課税対象となるデジタル税の導入をEUが計画通りに進めれば、米欧間の新たな貿易摩擦の火種となりかねない。

バイデン氏は制裁関税に否定的だが、製造業支援や雇用創出を重視する方針を掲げており、中国に次ぐ貿易赤字相手国・地域であるEUとの通商関係が一気に好転するとは限らない。

また、バイデン氏は欧州との同盟関係を重視する方針だが、トランプ政権同様に、ドイツに対して国防費の増額要求を続ける公算が大きい。来年秋のドイツの連邦議会選挙後は、メルケル首相が政界を引退し、国防費の増額に反対する環境政党・緑の党がドイツの連立政権の一角を占めることが確実視されている。

メルケル首相の退陣で、「強い欧州」を掲げるフランスのマクロン大統領のリーダーシップが強化されれば、米欧間の緊張が高まる恐れもある。

◇第一生命経済研究所主席エコノミスト 田中理

日刊工業新聞2020年10月23日

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