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3Dプリンターで臓器を造形!使うのは「剣山」

佐賀大大学院の中山功一教授が研究中
3Dプリンターで臓器を造形!使うのは「剣山」

3Dプリンター自体も中山教授が開発した

 日本が世界の先端を走る再生医療分野。佐賀大学でも、その最先端研究の一つが進んでいる。大学院工学系研究科の中山功一教授は、3Dプリンターを使って臓器を造形する研究に取り組んでいる。培養した細胞が球状になった細胞凝集塊(スフェロイド)を積み上げて固定することで、軟骨や血管をつくる。将来、患者自身の細胞を培養して移植することで、拒絶反応の少ない臓器移植が実現する期待がある。

 3Dプリンターを使った再生医療の研究は海外でも行われている。だが中山教授の手法は、スキャフォールドという足場となる基材を使わない点が特徴。混ざりもののない細胞だけの構造体がつくれ、完成した臓器にアレルギーや副作用のリスクがある異物が残留しない。中山教授は整形外科医でもあり、医学的知見を工学分野に反映させて機器も開発した。

 スフェロイドを極細の針が剣山のように等間隔に並ぶ治具に一つずつ刺して造形する。3次元で特定の位置に固定し、剣山に刺さったままスフェロイド同士が融合。目的の形状になった後に針を抜くと、細胞だけでできた臓器の形になる。細胞を任意の場所で固定できるため、空洞が必要な血管なども造形可能だ。

 肉眼では判別できない程度の塊を正確な場所に配置するシステムには、CADなど工学的技術が生かされている。2014年度には新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業で、細胞人工血管の臨床開発が採択された。中山教授は「パーフェクトな医療を求められるため、まだ実用化までは時間がかかる」としながらも、自身で医工連携を体現しながら開発に取り組んでいる。
日刊工業新聞2015年2月26日 特集「医工連携で地域に貢献する佐賀大学」より抜粋
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
「細胞塊=お団子」「剣山の針=串」と考えるとわかりやすいです。 縦横に密着して並ぶ串団子の団子同士がくっついて、串から抜くと大きな団子の完成。団子は串の途中に固定できる(団子のあいだにすきまをつくれる)ので、空間をつくることも可能なのです。しかも、団子100%なので食べても(体内に入れても)心配が少ない!ということです。 将来はiPS細胞の利用も見込んでいるとのこと。

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