【福島原発】セシウム量急速に減少、チェルノブイリ事故より回復早く
筑波大学、日本原子力研究開発機構、福島大学の研究グループは、東京電力福島第一原子力発電所の事故で放出された放射性物質の動きを検証し、チェルノブイリ原発事故より環境回復は大幅に早いことを示した。降水量の多さや除染作業の進行などにより地面に露出したセシウム量が急速に減少し、河川流入量も低減した。原発事故後の環境予測に重要な知見で、今後も福島の長期モニタリングを実施し研究を継続する必要がある。
福島第一原発事故後、多くの環境モニタリング研究がされたが、これらを客観的に総括したものはなかった。研究グループは、福島陸域での放射性物質移行に関する210本以上の論文を集約し、検証。放射性のセシウム137について、汚染と環境回復の実態をとりまとめた。
険しい地形と降水、人為的活動により福島の河川水のセシウム濃度低下はチェルノブイリに比べ急速に進み、チェルノブイリの知見から予測されるより早い回復が認められた。
森林におけるセシウム蓄積は、樹種や木の密度が移行速度を支配することが分かった。森林流域からの河川水や土砂を介した流出はチェルノブイリより1―2ケタ低い濃度で、ほとんどが森林生態内にとどまっていた。
森林以外の土地では表層土中濃度が大きく減少した。耕作放棄水田の土壌表層セシウム濃度は除染などで事故直後の約3%に減った。土壌中での下方移行も早く進み、空間線量率低減につながった。
日刊工業新聞2020年10月28日