「オンライン授業」は大学教育のゲームチェンジャー、今後の活用は?

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「オンライン授業」は大学教育のゲームチェンジャー

新型コロナウイルス感染症の対応で、大学ではオンライン授業が一挙に進みました。前期は各大学とも無理をしての実施でしたが、後期は大学による差が大きく出る状況となっています。

オンライン授業は経験してみると、「予想よりも学生(登学経験のない学部1年生を除く)にも教員にも評判がよい」という大学が多い状況です。前期にスムーズに進められたのは「以前から社会人教育のeラーニングなどで、この関連の知見を持っていた」「情報通信技術を得意とする教職員が相対的に多い」「新型コロナ発生を受けてスピーディーに、情報インフラ整備に資金を投下できた」といった大学でしょうか。

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IT利用の教育・学修支援の部署が力を発揮する(早稲田大学提供)

一方で、リアルタイム型ではないオンデマンド型で、「テキストなど学生が個々に目を通して課題を提出するのが、授業の大半」という大学も少なくなかったようです。

問題は後期の実施状況です。座学の講義はオンラインが中心でも、ゼミや実験、実習などは対面授業を実施しないと、やはりきちんとした教育効果は得られないと、見られるためです。

日本私立大学連盟の記者懇談会では、オンライン授業の私大経営への影響も話題に(6月)

学生同士がキャンパスに集い、リアルな交流をすることは大学生活に欠かせません。しかし文科省が8月末から9月半ばに、全国の国公私立大学、高等専門学校に対して行った調査では、消極姿勢のままの大学が一定比率でいることが明らかになりました。

ほぼ同じ調査が7月にもされていて、どうやらその時点で「全面遠隔」を予定していた全体の2割の大学が、それを問題視した文科省の通知などにより、8-9月の調査で「ほとんど遠隔」(対面の実施は3割以下)にシフトした、と見えるのです。大学の幹部層における「感染者クラスターが発生したら大変なこと。オンラインならその心配がゼロ」という判断が見え隠れしています。

文科省は後期の実際の実施状況を、改めて調査する計画です。それは「少々の対面授業でお茶を濁そうとしている大学が2割もいるのでは、見逃すわけにいかない」と考えているからでしょう。またウィズコロナでの方策として夏の調査では、「1クラスを対面とリアルタイム配信の教室に分け、交互に入れ替えて少人数化を図る」という浜松医科大学や、「(密集を避けるため)学食やバス停など施設の混雑状況をアプリで公開する」といった桜美林大学などの事例が紹介されました。

こうした工夫をせずに、大学・教員側が楽という理由でオンラインを主にする大学は今後、受験生の募集、ひいては経営の苦労が増えるのではないでしょうか。在学生の間でも「自分の所属大学にどれだけ信頼を置いて、この先の学生生活を送るべきか」をクールに見るケースが増えてくるでしょう。

写真はイメージ

また、先進的な大学と教員は、オンライン授業の質を高める手法の模索を、早いうちから続けています。そこで人気だったのは、国立情報学研究所(NII)が主催する「4月からの大学等遠隔授業に関する取組状況共有サイバーシンポジウム」です。ピーク時は2000人が同シンポジウムにオンラインで参加したといいます。

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回数を重ねてまもなく20回。テーマはオンラインの遠隔授業と対面授業のハイブッリッド化にシフトしています。 先進の大学では、学内の教員同士のレベルアップを図るイベントも開かれています。

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前期はともかく、後期そして2021年度から先は、こういった教育の質の向上に真剣な大学と、そうでない大学との差が大きく開いてくることでしょう。

一方、文部科学省は、オンライン授業を中長期的な教育施策の中に位置付ける新たな姿勢を見せています。初夏に公表した活動「スキームD」は、教育や情報のベンチャーや教員などのデジタル技術による授業革新アイデアを、ベンチャーキャピタルなどにアピールし、事業化を図ろうというものです。

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オンライン授業では、ログの大量データ(ビッグデータ)から教育効果を数値化するといったことが可能で、その魅力にフォーカスして、大学から新事業を生み出すことを期待しています。

政府の21年度予算の策定に向けて、各省が財務省に要求する夏の概算要求でも、オンライン授業を中心としたデジタル革新(DX)は、高等教育改革の目玉の一つです。1つの科目でオンライン授業後の対面の議論に重きを置く「反転授業」や、仮想現実(バーチャルリアリティー)での実験実習など、先進モデルの確立を図る大学などを支援する事業「プラスDX」で、90億円の概算要求を行っています。

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オンライン授業は大学教育において、近年最大のゲームチェンジャーとなることは間違いありません。学生には自ら受ける授業の工夫や、所属する大学の姿勢を体感しながら、社会全体で進むDXを通じて未来を見つめる、またとない機会と前向きにとらえてほしいと思います。

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