話した言葉が文字になる! マスク社会を支えるアプリ登場
高齢者・障がい者支援
三菱電機と兼松コミュニケーションズ(東京都渋谷区)は、話した言葉がタブレット端末などの画面を指でなぞると文字として浮かび上がるアプリケーション(応用ソフト)「しゃべり描きアプリBiz」を無償提供している。対象は老人ホーム・介護施設や聴覚障がい者支援団体などだ。
新型コロナウイルス感染症対策としてマスク着用が浸透したことで、発話者の口元が見えないほか、声もこもってしまうため、コミュニケーションの難しい場面が増えている。そこで、しゃべり描きアプリを提供した。
兼松コミュニケーションズ・法人営業本部の山村晃正通信ソリューション営業部長は「もともとは写真のデコレーションなどで個人向けを中心に想定して2019年に提供を始めた。ただ、コロナ禍で社会貢献活動として活用できると考えて無償提供に至った」と経緯を語る。
ライクグループが運営する老人ホーム「フェリエ ドゥ 磯子」(横浜市磯子区)は9月にしゃべり描きアプリを導入した。難聴の入居者男女1人ずつが利用している。入浴前に補聴器を外した際などでよく使うという。ライクは首都圏で運営する全24施設で導入を計画している。
従来必要だった1ライセンス当たり月500円のアプリ利用料が無料となる。提供期間は21年3月31日までの予定。画像に文字を重ねて表示できるため、書類に注意書きを追加したり、撮影した写真に文章を添えたりする用途でも使える。
両社が9月に無償提供を発表して以来約15社から申し込みがあり、合計約100台の米アップルのタブレット端末「iPad(アイパッド)」で活用されているという。
ニューノーマル(新常態)社会に合わせて、しゃべり描きアプリの進化も求められそうだ。三菱電機・デザイン研究所の平井正人氏は「今後の機能追加は考えている。コロナの中でも便利に使ってもらえる機能を開発する」と対応を急ぐ。(編集委員・鈴木岳志)