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12月に上場を計画するキオクシア、ファーウェイとの取引再開で投資家の懸念払拭なるか

12月に上場を計画するキオクシア、ファーウェイとの取引再開で投資家の懸念払拭なるか

フラッシュメモリーの需要は旺盛(四日市工場の第6製造棟のクリーンルーム)

キオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)が、9月末に延期を決めた東京証券取引所への上場を最短で12月に計画していることが分かった。主力の四日市工場(三重県四日市市)での新棟建設も前倒しし、投資のアクセルを緩めない。米国の制裁強化により取引停止中の中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)については取引再開を米商務省に申請。強気の姿勢を示し、米中対立の影響を重く見る投資家の懸念払拭(ふっしょく)を目指す。

キオクシアは近く、東証に対して上場を再申請する見通し。10月6日に予定していた東証への上場を9月末に延期した経緯があり、同一年度での再申請のため決算書類などは変わらない。そのため、審査は前回より迅速に進む見込み。

上場延期の決断は海外投資家を中心に売り出しの想定価格が高すぎるとの声が多く寄せられたためだ。さらに顧客であるファーウェイとの取引停止だけでなく、9月のハイテク関連株価全体が軟調で推移したことも逆風になった。

ただ、キオクシアにとって、ファーウェイ向けの売上高は全体の10%未満にとどまる。米アップルは同20%を超え、米ウエスタンデジタルと米デル・テクノロジーズも同10%を上回る取引規模。米中貿易摩擦の影響を株式市場などで過大評価されている面があるが、米商務省からファーウェイとの取引再開の許可が下りれば、さらなる懸念払拭(ふっしょく)の好材料となりそうだ。

NAND型フラッシュメモリーの世界需要は旺盛だ。キオクシアは四日市工場の第7製造棟の建屋着工時期を当初計画の2021年9月から同4月へ半年前倒しする方向だ。すでに土地造成は着手済み。上場手続きの進捗(しんちょく)に関係なく、増産投資への積極的な姿勢は崩さない。

調査会社による試算では、スマートフォン向けフラッシュメモリーの消費量見通しは24年まで年平均28%成長する。フラッシュメモリーを多く搭載する記憶装置のSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)も24年までデータセンターと法人向けストレージ機器用途で同20%の成長を見込む。また、新規市場として家庭用ゲーム機向けのSSD需要増も期待される。

日刊工業新聞2020年10月6日

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