手づくりTシャツから始まる「半径10メートルの幸せ」

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自分で作ったTシャツには愛着がわく

デザイナーの友だちと一緒に「ぼくらラボ」というのをやっている。半径10メートルの幸せを考えよう、そのためのアイデアを持ち寄るプラットフォームを作ろうという趣旨である。

なぜ「半径10メートル」なのか? ぼくたちの幸福度を決めるのは、手に入れるのが難しい彼方(かなた)にあるものではなく、例えば一緒にいる人であり、近くにいる友だちであり、同居している猫であり、世話をしている草花であり、自分がいる場所(部屋や家や庭)であり、毎日使っているものや目にしているもの、おいしい食べものやお酒など……だからである。

ネットワーク化された世界では空間的な距離は消失する。つまり心理的にも物理的にも「半径10メートルの幸せ」は惑星サイズであり、仲間は世界中に潜在している。こうした仲間をいかに可視化するか。そこでTシャツを作ることにした。まあ、半分は遊びだけど、「欲しいものは自分たちで作ろう」というメッセージも込められている。こうしたメッセージに賛同してくれる人たちが、とりあえず「仲間」ということになる。

これまでは生産者(企業)が作るものを、ぼくたちは一方的に消費するだけだった。「消費させられてきた」と言ってもいい。でもそろそろ、みんな消費者であることに飽きつつある。モノは豊富にあり、なんでもたやすく手に入る。しかも品質や性能はほぼ均質化している。すると消費という行為はますます魅力のないものになる。

例えばアマゾンがつくり出す欲望のなかで消費をつづけることに、あなたは魅力を感じるだろうか? 便利だから使っているだけではないだろうか。ただ消費するだけでなく、自分で手を加えたいのだ。改造し、アレンジし、関与したい。

特に若い人たちに、そうした傾向が強い気がする。何かを作り、表現し、それを会員制交流サイト(SNS)などで発信する。多くの人が消費者であるよりもクリエイターでありたいと思っている。

というわけで、手はじめにTシャツをデザインしてみてはどうだろう?簡単なデザインツールを使って、いまは一枚から注文できる。気に入った絵柄のものを自分で作って着てみよう。生きている気分が少し変わるかもしれない。

日刊工業新聞2020年10月16日

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